3月に新潟市で指された将棋の棋王戦では、藤井猛九段が立会人を務めた。全タイトルの八冠を保持する藤井聡太棋王について、本社ニュースサイト「デジタルプラス」の取材に「新しい目標を設定しないといけない大変さがある」と答えていた

▼将棋のタイトル戦をはじめ、勝負事や厳正さが求められる場で間違いのないよう見届けるのが立会人である。暮らしの中の身近なところでは、選挙でも大切な役割を担う。投票所を訪れると、有権者から選ばれた数人の立会人がいる

▼公正な選挙のために欠かせない存在だが、なり手の不足に悩む自治体もあるようだ。投票所の立会人を務めた男性が以前、こぼしていた。「朝から晩まで座りっぱなし。私語もできない」。負担は少なくない。なり手不足が投票所の削減につながっている

▼こうした状況に対応しようと、鳥取県は投票所の「オンライン立ち会い」の制度導入を推進している。6月9日に投開票される、同県智頭町の町長選と町議補選で実施される見通しだ

▼一部の立会人は町役場で待機し、投票所に設置されたカメラの映像を通して投票を見守る。負担を少しでも和らげようという取り組みだ。現行法では投票所で実際に立ち会うのが原則だが、柔軟な運用があっていい

▼人口減が続く本県も人ごとではない。県内の町長選で、投票者が別人になりすまし二重投票をしたことに立会人が気づいたことがあった。オンラインであれ実地であれ、その役割が大切なのは言わずもがなだ。

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