長い海岸線を有する本県は、海のレジャーを楽しむには絶好の舞台だ。とはいえ、相手は自然である。人間の思い通りに事が運ぶとは限らないから注意が不可欠だ
▼風が収まったから波も穏やかになっただろうと出かけてみると、まだまだ荒れていることがある。そんな波を「余波」と呼ぶ。比喩的に使われることも多い言葉だ。ある物事が終わった後も、周囲に及ぶ影響のことを指す
▼新型ウイルス禍の状況を語る際は「波」という言葉がよく使われる。感染症法上の位置づけが5類に移行して1年になるが、完全に収束したわけではない。この冬には流行「第10波」が到来した。昨年5~11月に命を落とした人は、全国で1万6千人余に上る
▼余波も楽観できない。後遺症に悩む人は多いようだ。感染から3カ月以上経過しても疲労感や息切れ、認知機能低下など多様な症状が続くことがある。感染者の10~20%で発症するというから、かなり身近な脅威だ
▼外出を控えて感染対策に懸命に取り組んだ結果、ほかの感染症に対する免疫が十分に得られない、皮肉な状況も起きているらしい。呼吸器の炎症を引き起こすRSウイルスなどの感染症が増えている
▼日常生活は以前の表情をほぼ取り戻したように見える。行きたい所に行けず、会いたい人に会えないような暮らしはもうたくさんだ。ただ、風が収まったようでも感染の波は落ち着いてはいない。海と同様に病原体も自然の一部である。人が願うようにならないのは当然なのだろう。