児童5人の小さな学びやが今春、静かに役目を終えた。柏崎市の高柳小学校が閉校し、かつて高柳町だったこの地域から中学校も小学校もなくなった

▼学校はまちづくりの核を担っていた。児童は狐(きつね)の夜祭りや鳥追いなど伝統行事に関わり、一緒に地域を盛り上げた。教育熱心な土地柄で、子どもは「地域の宝」だ。本紙柏崎面に1年間連載された「学校がなくなる」で紹介されていた

▼自作の和紙を使った卒業証書が印象深かった。地域特産の「門出(かどいで)和紙」への理解を深めようと長年続いている。春にコウゾを校庭に植え、夏に間引き、秋に枝の皮をむく。冬には雪さらしを行い、水が最も冷たい頃に紙をすく

▼最後の春、思い出が詰まった卒業証書を手に卒業生1人が学びやを巣立った。閉校式では3、4年生の4人にも自作の和紙に書かれた「修了書」が手渡された。高柳小からの卒業という意味を込めて卒業証書の通し番号が記載されている

▼同僚記者はこの日、修了書より一回り小さい「取材がんばり賞」を頂いた。「あなたは数年にわたり高柳小の取材にまい進しました。休み時間に一緒に遊んでくれたり、時には面倒を見てくれたりと大活躍でした。ありがとうございました」

▼児童がすいた和紙の賞状に感謝の言葉がつづられていた。自分が表彰されることを、同僚は当日まで知らなかった。子どもたちの思いに触れ、胸がいっぱいになったという。賞状を手に児童と写った記念写真には、4人に負けない笑顔がはじけていた。

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