旧黒埼町の職人、渡辺寅三郎さんが製作した砂時計の数々(写真部・佐藤勝矢撮影)

 砂時計-。子どもの頃はカップ麺にお湯を注いでから3分間、空腹にまだか、まだかと心を躍らせながら、砂を見続けた。

 デジタル化が進むと、パソコンの画面で目にすることが増えた。むちゃな操作をすると、マウスポインターの脇でくるくる回り続け、そのまま画面が固まってしまうことも。苦々しい思いをしたのは私だけではないだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大で社会が混乱する中、さらさらと静かに砂を落とし続ける砂時計に、ノスタルジックな雰囲気を感じ、心が落ち着く。

 旧黒埼町(新潟市西区)は、国産砂時計の一大産地だった。具体的な数字は残されていないが、「黒埼町史・通史編」には、砂時計の写真に「全国一の生産を誇る」...

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