太平洋を共有する隣人として深い関わりがある国々だ。培ってきた協力関係をさらに強め、気候変動をはじめ山積する課題に共に対処していきたい。

 日本と太平洋の島しょ国・地域による「太平洋・島サミット」が東京で開かれた。3年ごとに日本で開催され、今回は10回目の節目となった。

 パラオやパプアニューギニア、フィジーなど「太平洋諸島フォーラム(PIF)」に加盟する18カ国・地域の首脳らが参加し、気候変動や海洋分野を中心に3日間にわたって議論した。

 採択した首脳宣言と共同行動計画では、PIFが掲げる経済開発や気候変動など7分野を今後3年間の重点協力分野に設定した。

 島しょ国が「存続に関わる唯一最大の脅威」と位置づける気候変動問題に関しては、日本の支援を強化することを確認した。

 ツバルやキリバスなどは、地球温暖化による海面上昇で国土が水没する危機にさらされている。日本の技術やノウハウ、資金によって、危機的状況を脱するための寄り添った支援を行ってほしい。

 注目されるのは、首脳宣言に「武力や威圧による一方的な現状変更の試みへの反対」と明記したことだ。国際法に沿ったルールに基づく自由で開かれた国際秩序の重要性にも言及した。

 共同行動計画には、自衛隊の航空機や艦船の寄港を通じた防衛協力や、海上保安機関の交流強化も盛り込んだ。

 念頭にあるのは、インフラ整備などを通じて太平洋地域で急速に影響力を強める中国の存在だ。

 ソロモン諸島は2019年、台湾と断交し中国と国交を樹立し、22年には安全保障協定を締結した。事実上の軍事拠点になるのではないかと懸念されている。

 中国の影響力が強まれば、米国の太平洋での軍事力が制約される恐れもある。このため米国も島しょ国と首脳会合を開くなど巻き返しを図っており、太平洋地域は米中がせめぎ合う最前線の様相を見せている。

 こうした中で迎えた今回のサミットで日本は、島しょ国との協力関係を再確認した形ではある。

 とはいえ、中国をにらんだ日本の看板政策「自由で開かれたインド太平洋」の文言が首脳宣言から消えるなど、結束の維持に苦慮した様子がうかがえるのも事実だ。

 重要なのは、各国の国民生活に身近な民生分野を中心に、日本らしい支援を継続することだ。軍事的な緊張感を高めるようなことは避けなければならない。

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に、島しょ国は関心を寄せている。今後も島サミットの議題とすることが確認されたが、日本政府は科学的根拠に基づいた真摯(しんし)で丁寧な説明を続けていかなければならない。