辞職勧告決議に従わず市政を担い続けるのなら、混乱を収め、市政を安定させなければならない。果たして、それができるのか。
高卒者を巡って不適切な発言をしたとして、上越市議会から辞職勧告を受けていた中川幹太市長が、記者会見で続投を表明した。
厳しい意見の一方で、期待する声も寄せられたとし、「職責を全うする」と重ねて強調した。
問題の発端は、企業誘致による人材獲得をただす6月の市議会一般質問に対する答弁だった。
市内に工場がある大手化学メーカーの社名を挙げ「工場では高校卒業程度のレベルの人が働いている。企業誘致で頭のいい人だけが来るわけではない」と発言した。
差別ととられかねず、市長としての見識が疑われる。その後に発言を撤回し謝罪したが、「表現方法を間違えた」という釈明に市議会で納得する向きは乏しい。
根底には、2021年11月の市長就任後、失言を繰り返し、その度に撤回と謝罪を重ねてきた中川氏への不信感がある。
22年4月にあった市内の商店街関係者との会合では、「直江津に本当の意味の商店街はない」「若い世代で高田本町を中心市街地だと思っている人はいない」などと発言した。商店街の代表らから抗議を受け陳謝した。
23年7月には市と経済団体の懇談会で、市内の2私立高校は「レベルがちょっと下の方にある」と発言し、後日、両校に謝罪した。
中川氏はいずれの発言も「真意を正確に伝えられなかった」とし、表現方法の問題とした。
しかし、真意を伝えられない発言が度重なっては、安心して市のかじ取りを任せることはできない。政治家の資質に疑問が湧く。
気になるのは、不適切発言が企業誘致や地域経済、教育など、市政の重要課題に絡むことだ。市長がけん引すべき市政課題で、自ら足を引っ張ってきた責任は重い。
中川氏は会見で「自分の公約を実現したい」と繰り返した。続投は、公の利益を実現するためでなくてはならない。
中川氏は責任の取り方として、議会に否決された自らの処分案と同額の給料5カ月分(約473万円)を政界引退後に市へ寄付すると会見で表明した。公職選挙法に抵触しないための手法ではあるが、時期は不明だ。
これで、議会や市民の納得を得られるだろうか。
市議会は、辞職勧告決議に議員の8割が賛成しており、今後、市長が提案する議案を否決することも考えられる。リコール(解職請求)に向けた動きもあり、市政の混乱は収まりそうにない。
中川氏が最優先するべきは、市民生活への悪影響と市政の停滞を避けることだ。そのためには改めて、より多くの市民の声を聞くことが求められる。
