自転車用ヘルメットを着用して登校する東京学館新潟高校野球部員=8月下旬、新潟市中央区

 新潟県が全国最下位という不名誉な事柄がある。自転車に乗る際のヘルメット着用率だ。警察庁によると、2023年7月の全国調査で着用率は2・4%にとどまった。街中でかぶっている人を見かけると、まだ珍しいからか目で追ってしまう。着用しない理由には「面倒だ」「格好悪い」などいろいろあるだろうが、ヘルメットは事故時に大事な頭部を守ってくれる装備だ。一人でも多くの人に関心を持ってもらいたい。着用の促進を図る活動や頭を守る仕組み、ファッション性にも配慮した最近の商品など、ヘルメットを巡るあれこれを調べた。

(報道部・奥村直之)

着用に抵抗感…そこで「周りが着けているなら」に着目!

県が“普及作戦”、計11高校に貸与

 8月下旬。東京学館新潟高校(新潟市中央区)の野球部員が、朝練のため自転車で登校した。全員が自転車用ヘルメットをかぶっている。「最初は抵抗があったけれど、慣れれば気にならない。安心感がある」。2年生の男子生徒(17)はそう話した。

 部員たちのヘルメットは新潟県交通安全対策室が貸与したものだ。まずは関心のある生徒に渡し、着用してもらう。それを見た他の生徒が「自分もかぶろうかな」と思い、広がることを県は期待している。

 自転車乗車時のヘルメット着用は、2023年4月に努力義務化された。警察庁によると、23年の調査で新潟県の着用率は2・4%と全国平均の13・5%を大きく下回った。「街中を見ても着用者は本当に少ない。県として対策をとるしかないと考えた」。県対策室の金塚傑之室長は振り返る。

自転車を駐輪場に止め、ヘルメットを外す東京学館新潟高校野球部員=8月下旬、新潟市中央区

 県は2023年秋、独自にアンケート調査を実施。かぶらない理由を尋ねたところ、「持っていないから」が約8割と最多だった。年代別では20、30、60代で「髪型が崩れるなど不快」との回答も各4割前後あった。

 髪型が崩れるのは仕方がないが、どうしたらかぶってもらえるのか。県対策室が着目したのが「周囲が着用すれば着用する」との回答だった。全体で約2割、10代に限れば約4割に上った。

 そこで県は2024年春、寄贈を受けたヘルメット約250個を希望する高校へ貸し出し、波及効果を狙う取り組みを始めた。3カ月貸した上で望まれれば譲渡する。手を挙げたのは、これまでに計11校に上る。

 金塚室長は「地道だが、着用は着実に広がる」と期待する。県のヘルメットは8月までに払底したが、今後も寄贈を募って活動を続ける。

 村上市の荒川高校では、...

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