4月下旬、新潟市江南区の市中央卸売市場
4月下旬、新潟市江南区の市中央卸売市場

 海や川を見つめる長期企画「碧(あお)のシグナル」の5月シリーズは「魚尻(うおじり)交通手段が限られた江戸時代や明治時代、生魚の鮮度を保ち、運べた範囲を指す」の視点を通し、流通や小売りの変化を追います。(6回続きの2)

 「冷蔵庫に使われていた断熱材から思い付いたんだ」。祖業の地、長岡市寺泊地域にある角上魚類寺泊本社。日本海を一望できる一室で、創業者兼会長の栁下(やぎした)浩三さん(85)は、半世紀以上前のことを振り返った。魚の流通をがらりと変えた、発泡スチロール製の魚箱を巡るエピソードだ。

 スルメイカの輸送に悩んでいた頃だった。いまや不漁で“高級魚”だが、当時は寺泊港に初夏、30隻を超える...

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