衆参両院が少数与党となって迎えた初の国会だ。与野党はそれぞれ、国民の負託に応えられるか試されている。そう強く認識し国会運営に当たってもらいたい。
7月の参院選を受けた臨時国会が1日、召集された。会期は5日までで、衆参の予算委員会集中審議で行われる石破茂首相の日米関税交渉に関する説明が柱となる。
与党の自民、公明両党が衆院に続いて参院でも過半数を下回る状況下での、異例の国会攻防が幕を開けたといえるだろう。
予算を伴う法案の単独提出が可能となった国民民主党、衆参通じて初の常任委員長ポストを得た参政党をはじめ、国会の多党化が進む中で、各党が政策実現に向けてどう動くか、注目したい。
試金石となるのは、立憲民主党など野党7党が1日に提出したガソリン税の暫定税率廃止法案だ。
ガソリン価格を抑えるために支給している補助金を拡充しつつ、11月1日からの廃止を目指す。
今国会での審議はないが、与野党は年内廃止で合意しており、秋の臨時国会での成立を図る。
廃止法案は、参院選前の通常国会でも野党が共同提出し、衆院で可決したものの、与党が過半数を占めていた参院では採決されず、廃案となった経緯がある。
一転して成立に向けて動きだすのは、野党の協力を得なければ予算も法律も成立できない与党が、政権維持のために妥協を迫られたことが大きい。
一方の野党は、政策実現に向けてしっかりと課題を解決できるかどうかが問われる。
法案は暫定税率を廃止すれば、国と地方を合わせて年約1兆円規模の減収が見込まれるとするものの、代替財源は明らかではない。
財政事情の厳しさから半世紀にわたって維持されてきた固定的ともいえる財源である。地方への影響は大きく、全国知事会が恒久的な財源確保を求めるのは当然だ。
トラックなどで使われる軽油にも同様の暫定税率があるが、その取り扱いは棚上げされている。ガソリンのみ減税されれば価格差がなくなり、運送業界などから不満が出ることが予想される。
課題への手当が不十分なまま押し通せば、批判を免れないことを野党は心すべきだ。
与野党は1日に初の実務者協議を開き、制度設計の検討を始めた。閉会中も協議するという。
与野党ともに、国民に対して大きな責任を負っていると強く自覚し、協議に臨んでもらいたい。
今後の国会は、ガソリン税で共同歩調を取った野党が共闘を維持するか否かで先行きが変わる。
野党が連携できれば、消費税減税や選択的夫婦別姓といった課題が動く可能性があるだろう。
各党は党利党略を優先する内向き姿勢ではなく、国民本位の国会とするために汗をかいてほしい。