新発田市民403人の筆でつづられた一冊の本がある。「生きる 戦時下しばた市民の記録」。1982年に刊行され、満州事変から太平洋戦争までの従軍経験や銃後の苦労、終戦後の混乱などが、それぞれの目線で描かれている。歴史学者らが編んだ戦史には書かれていない市井の人々の戦争があった。戦後80年の夏、寄稿者の遺族らを記者が訪ね、「草の根の記憶」をたどった。(4回続きの2)

1938(昭和13)年7月、張鼓峰(ちょうこほう)(現中国琿春(こんしゅん)市付近)で日本とソ連の両軍が衝突した。翌年のノモンハン事件へと発展する「張鼓峰事件」だ。激戦は2週間にわたって繰り広げられ、多数の死傷者を出す。この戦闘に21...
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