小柳春一郎さん

 11日で発生から15年となる東京電力福島第1原発事故。住む場所やそれまでの生活を奪われた人たちへの賠償の根拠となったのが原子力損害賠償法だ。1961年にできたこの法制度の立法過程に携わった民法学の大家、故我妻栄(1897〜1973年)は「被害者の一人でも泣き寝入りはさせない」との理念を唱えた。描いた構想はどのようなものだったのか。いま、実現しているのか-。我妻の残した膨大な資料を基に、制度の成立過程を研究した小柳春一郎・獨協大名誉教授(近代法制史)に聞いた。

(報道部・三浦穂積)

◎小柳春一郎(こやなぎ・しゅんいちろう)1954年、長崎県生まれ。東大大学院単位取得退学。法学博士。山梨大助教授などを経て、獨協大教授、2024年から名誉教授。著書に「原子力損害賠償制度の成立と展開」「震災と借地借家-都市災害における賃借人の地位」など。

福島第1原発事故では実質的に政府が資金、「我妻構想に近い形で賠償実現」

「自主避難」救済に課題も…「泣き寝入り生じない制度に」

-我妻は原賠制度策定で中心的役割を担いました。

 「当時の国内最高の民法学者で、原子力の平和利用という新しい分野での立法準備を託された。我妻自身、深い関心を持っていた無過失損害賠償論の一例と捉えて携わったと思う」

-無過失損害賠償とは。

 「過失がなくても賠償責任を負う考え方だ。...

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