賃上げの流れを大企業から地方に多い中小企業や、非正規雇用労働者にも広げていきたい。企業の努力だけではなく、政府による後押しも不可欠である。
連合は23日、今春闘での傘下労働組合の賃上げ要求に対する企業側回答が、平均月額1万7687円で、賃上げ率は5・26%だったとの第1回集計を公表した。
芳野友子会長は「全体では3年連続5%台で、好スタートが切れている」と評価した。
企業が高水準の回答を維持したのは、人手不足と物価上昇が続く中、労働力の確保を重視した結果と言えよう。
連合は例年、集計を7回行い、最終結果を7月上旬に公表する。大企業の回答が多い前半の方が、高い数値が出やすい傾向にある。
中小企業の労使交渉は今後本格化する。中小は、労働者の約7割を雇用しているが、相対的に賃金が高い大企業との格差是正が長年の課題である。
中小では、業績が改善しないにもかかわらず、離職を防ぐため賃上げを迫られ、「賃上げ疲れ」も指摘されている。
高市早苗首相は23日、経済界や労働団体の代表者らが出席する「政労使会議」で「賃上げの勢いを、地方の中小企業や小規模事業者にも、広く波及させていくことが重要だ」と述べた。
政府は賃上げの原資捻出に向けて、生産性向上のための設備投資への助成制度や、コスト上昇分を価格に転嫁する際の支援策を設けている。政策を丁寧に説明し、実効性を上げてほしい。
気がかりなのは、米国とイスラエルのイラン攻撃で原油高が進んでいることである。
企業の賃上げへの機運に水を差す懸念が拭えない。政府は影響を注視して、きめ細かく対応してもらいたい。
原油高は石油製品だけではなく、物流や電力といった多くの分野のコスト増加につながり、物価を押し上げる。
「有事のドル買い」によってドル高円安が進行すれば、輸入物価が上昇し、食品などの価格高騰を招きかねない。
物価変動を考慮した実質賃金がプラスになるかも危うい状況だ。
働き手1人当たりの実質賃金は、2025年まで4年続けてマイナス圏で推移してきた。
26年に入って消費者物価指数の上昇率がようやく落ち着きを見せ始めた。だが、「中東情勢の影響で26年度の実質賃金がマイナス圏になるリスクがある」と指摘する専門家もいる。
せっかく賃金が伸びても、それを上回るペースで物価高が進めば、家計にしわ寄せが及び、生活を向上させることはできない。
政府は賃上げに向けて旗を振るだけではなく、物価安定にも力を尽くす必要がある。
