今後の探査活動に向けて大きく前進した。人類にとって歴史的な快挙だ。宇宙空間の平和利用につながるよう期待する。

 米国とカナダの宇宙飛行士4人が宇宙船オリオンで月の裏側まで飛行し、地球から40万6771キロ先に到達した。日本時間11日午前に地球に帰還する。

 アポロ13号が1970年に達成していた人類の最遠到達地点を56年ぶりに更新した。

 米国が主導し、日本や欧州などが参加する国際月探査「アルテミス計画」の一環だ。

 月に探査拠点を構築し、経済活動を創出することを目標とする。月を足掛かりに、火星へと人類の活動範囲を広げる狙いもある。

 2028年に飛行士を月に着陸させることを目指している。今回はオリオンが人を乗せて約38万キロ先の月との間を安全に往復できることを確かめる試験だった。

 オリオンからの電波を北海道などで受信した。結果は米航空宇宙局(NASA)が宇宙船の速度や軌道の把握に生かすとみられる。

 日本は計画の要となる機器の提供や物資輸送などでも貢献することから、将来的に日本人飛行士が月面着陸する機会を得た。

 日本の宇宙開発技術の向上にもつなげていきたい。

 月探査を巡っては米国と中国による競争の激化が気がかりだ。

 月の北極と南極に60億トンの水の存在が確実視されたことが背景にある。水を電気分解すればロケット燃料になる水素と酸素の製造が可能で、月を拠点に宇宙開発の道が開ける。

 中国は2月、新型の有人宇宙船の飛行試験に成功し、35年までにはロシアと共同で月に拠点を設ける計画だ。

 米国は先行されれば、立ち入り禁止区域などを設けて活動を制限されかねないと懸念する。

 各国の競争で技術力が高まることは歓迎できるが、宇宙空間の軍事利用の拡大は見過ごせない。

 昨年7月には中国軍が衛星同士の接近戦の演習を実施したことが明らかになった。

 これに対抗し、米国も宇宙空間での迎撃手段の構築を急ぐ。

 1966年に国連で採択された宇宙条約は、国家による天体や宇宙空間の領有を禁止し、探査・利用の自由と平和利用を掲げた。

 この原則を、各国には改めて認識してもらいたい。