萩原朔太郎が鯨波で書いた「海水旅館」の詩碑=柏崎市学校町

 学生の時、国語の教科書に載っていた詩人、萩原朔太郎(1886~1942年)の作品「竹」を読んだ瞬間の衝撃は忘れがたい。「竹、竹、竹が生え」と音楽のようなリズムで、魂の震えが言葉を通じて伝わってきた。以来、この詩は私の心の片隅にあり続けた。

 「日本近代詩の父」と呼ばれる朔太郎は、昨年が没後80年。その節目に「萩原朔太郎大全2022」と銘打ち、全国53の文学館や美術館で展覧会が開かれた。

 朔太郎は、現在の群馬県前橋市の開業医の長男として生まれた。子どもの頃から文学に、10代で音楽や写真撮影などに熱中。医師修業のため萩原家に来た、いとこの萩原栄次に短歌の手ほどきを受け、詩歌の世界にのめり込んでいく...

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