早朝の川西屋で蒸し上がった赤飯。長岡ならではのしょうゆ味だ=長岡市神田町1(長岡支社・新井田悠撮影)

 新潟県長岡市で赤飯といえばしょうゆ味。そして「赤色」というより「茶色」に輝くもち米。素朴ながら絶妙な味加減は魔法のようで、食べ始めると「もう一口」「もう一口」とついほおばってしまう。

 長岡に生まれ育った自分にとって、しょうゆ赤飯は身近なごちそうだった。お祝い事だけでなく、ちょっとしたイベントや集会でもいただけるとうれしい。その気持ちは大人になっても変わらない。

 一般的な赤飯は小豆の煮汁などで色づけし、ごま塩を振りかける。長岡のしょうゆ味が一般的ではないと知ったのは、大学進学で県外に出た後だった。゛赤い゛赤飯を初めて食べたときは、もちろんそれはそれでおいしいのだが、強い違和感を抱いたことを覚えている。

 一方で、新潟県外の人が長岡市での結婚式などでお土産にしょうゆ赤飯を持ち帰ったときに「これは赤飯じゃない」と困惑するらしい。現在は「長岡赤飯」などの名称で認知度も上がった。スーパーや菓子店で販売され、日常気軽に味わえる。

出来上がったしょうゆ赤飯をパックに詰める川西屋のスタッフ=長岡市神田町1

 市外の人に「ただのしょうゆおこわでしょ」と言われると、思わずムッとしてしまうのは、ふるさとの味として誇りを持っているからなのかもしれない。慣れ親しんだ味の魅力と、そのルーツを探った。...

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