今回は、皆さんのあまり知らないフランスの田舎の話をします。

 フランスといえばパリと思っている人が多いと思いますが、フランスは農業国でもあります。麦の生産量はかなり多く、10年前までは農産物の輸出量世界一ということでしたが、今は3番目になったとか。そして工業国でもあります。エアバス、TGV、原発(これはあまり自慢にはなりませんね)…。そして芸術、観光の国です。

 私はフランスに来て48年。日本に滞在した時間より長くなりました。私は今ブルターニュ地方に来ています。世界遺産のモン・サン・ミシェル大聖堂から40キロほど内陸に入った所です。

 ブルターニュ地方は御影石でも有名です。私は彫刻家で、頻繁に御影石を使って彫刻を制作しています。ここで石を切断したり、粗削りをしたりしてからアトリエに運びます。大きなもので10~20トンの石を買い、それを切断して使うわけですが、私のアトリエには3トンのフォークリフトしか無いので、10トンとなると私のフォークリフトでは持ち上がりません。

 御影石というとお墓に使われるイメージが強いようですが、最近は建築物に多く使われています。私が彫っている御影石はルーブル美術館前の噴水、シャンゼリゼ通りの歩道や、街路樹の周りを囲む石として使われています。この石は世界中に輸出されています。

 日本の石切り場というと、山の中の不便な所が多いようですが、フランスの石切り場の多くは、平地もしくは丘陵程度の土地を下に掘り出していくケースが多いようです。

 石切り場は騒音、公害、跡地利用など多くの環境問題を抱えています。特にピンク色のクラルテ御影石は市街地からそう遠くない場所で採掘され、削岩機の音などで近所から反感を買っています。

フランスの石切り場の風景

 古代のローマ時代やギリシャ時代には、跡地を公園にしたり、屋外美術館、屋外コンサートホールにしたり工夫をしていました。現代に生きる私たちも、そこから学ぶことが多いように思います。


原田 哲男さん(新潟市秋葉区出身)
 (原田さんは1949年生まれ。本社国際交流拠点欧州事務所代表、新潟・フランス協会パリ支部長を務めています)