かごに盛られた黒ニンニク。「ニンニク」と名前が付くが、甘みがあってにおいは少なく、食べやすい=長岡市(長岡支社・芳本卓也撮影)

 「○○(会社名)の黒ニンニク」-。何年か前、自宅でテレビを見ていたらこんなCMが流れてきた。

 気になった。ニンニクと聞くと真っ先に、あの強いにおいが思い浮かぶ。「健康に良さそうだけど、におうんだろうなあ」と勝手に決めつけ、購入したことはなかった。

 しかし2年前。実家に滞在したとき、朝食に謎の黒い物体が出てきた。大きさは手の親指の第1関節くらい。

 「何これ?」と私。母は「黒ニンニクだよ」とさらり。「ニンニク? 朝から無理だて」「何言ってんだて。においなんかしないて」

 こんなやりとりの後、恐る恐る口にしてみた。「あれ、おいしい」。強烈なにおいはほとんどない。むしろ果物のような甘みがあり、何個でも食べられる気がした。

 それからは黒ニンニクが好きになり、毎日のように食べている。調べてみると、一般的な白いニンニクを長時間、高温下に置くと、黒色に変わって刺激臭が抜け、黒ニンニクになるのだそうだ。

 しかし、たったそれだけで白が黒に変わるのだろうか。オセロじゃないんだし。かえって謎は深まった。

 ニンニク、黒ニンニクとも日本一の生産量を誇る青森県の「協同組合青森県黒にんにく協会」(青森県おいらせ町)によると、黒ニンニクの生産量のほとんどを青森、三重の両県で占めており、新潟県の生産量はわずかという。

 青森も三重も遠い。身近な県内で、作っているところは見られないのだろうか。諦めていたところ、長岡市の生産者、高橋淳一さん(42)が協力してくれることになった。

 その色のごとく「黒い」ベールに包まれている黒ニンニクの正体に迫ろうと、関係者を訪ねた。...

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