人材紹介会社で求職・転職者へのコンサルティングや仕事の紹介をしています。ニューヨーク(NY)市は全米の他の地域に比べて雇用に対する法律が厳しく、常に新しい法令が公布されている街です。雇用時にも訴訟大国ならではの緊張感があります。

 米国では雇用差別(人種、宗教、国籍、性別、年齢、同性愛者、出生地)が禁じられており、日本では一般的な定年退職という制度はありません。年齢が高いから解雇するというのは年齢差別となり、訴訟の対象です。

 NYは全米の中でもユダヤ教信者が多く、ユダヤ教では金曜日の日没から土曜日の日没までを休息日としているため働くことはできません。宗教により特定の曜日が働けないから雇わない、ということも宗教差別の対象となります。

 面接時も、日本では一般的な質問でも聞いてはいけないことが多々あります。「お住まいはどこですか」「ご結婚されていますか」「お子さまはいますか」のみならず、「罪を犯したことはありますか」という質問も禁じられています。その人が任される仕事をできるか、スキルの可否が測れる質問のみが許されています。

 職場でのセクハラ行為防止のため、年に1回全社員がセクハラ研修を受講しなければならないという法令があります。その他、搾乳が必要な方のためにトイレ以外の場所を会社が提供しなければいけないという法令もできました。また家族が病気になった時や出産時に、社員は最長8週間休むことができ、企業側もそれを理由に解雇してはいけないという法令もあります。

 近年では社員のひげ、髪形を会社側が指摘することもできなくなりました。法令ではありませんが、近代的思想の企業が多いNYでは、飼い犬を連れて出社したり、新しくペットを飼う際は有給休暇とは別に2週間、給料をもらいながら休んだりすることができる会社も増えています。

 常に更新されるNYの雇用法。今後はどのような法律ができるのか楽しみです。

NY州から配布されている労働法のポスター。
雇用主はこのポスターを社員が見られる場所に設置する義務がある


磯部 未来さん(胎内市出身)
 (磯部さんは1984年生まれ。敬和学園高校を卒業後、2003年から米国に住んでいます)