
2022年10月、全線で再開通した新潟県魚沼市と福島県会津若松市を結ぶJR只見線は、2023年の紅葉シーズンもにぎわいを見せている。
バブル全盛期、年に1回、只見線がすし詰めになったことがある。真夏に行われる「只見線沿線ナイトウォーク」に参加する人たちだった。子どもの頃、私も何度かナイトウォークに参加し、その列車に乗った。確か4両編成だったと思う。
イベントは、国道252号を福島県只見町から60キロ、旧入広瀬村(魚沼市)の旧大原スキー場から25キロ、いずれも旧広神村(魚沼市)まで夜通し歩き続けるというもの。過去の記事をひもとくと、1989年に2800人が参加していた。
コースの大半が山間地で真っ暗である。集団もしばらく歩くとばらけ、口数も減ってくる。スノーシェッドに鳴り響くトラックのエンジン音は不気味だった。集落に近づき、街灯が目に入るとほっとした。
一方、未明にもかかわらず、国道沿いでは住民がスイカやバナナを配ったり、「暑いだろう」とホースで水をかけてくれたりしてくれた。随分励まされた。
あれから30年以上が過ぎた。ナイトウォークはいつの間にか終了し、沿線の人口も随分減った。魚沼市の国道252号は鉛色の空が広がる11月になると一層哀愁が漂う。
紅葉を終えた晩秋に見どころはあるのか。そんな関心から車を走らせて、何人かに尋ねてみた。「何もないよ」と言いつつも、思案を巡らせ「そういえば…」と答えてくれる人がいた。迎える人の温かさは30年前と変わらない。
そして何もないわけではなさそうだ。駆け足で訪れる冬が来る前に、この季節だからこそ立ち寄ってみたくなる「魚沼・R252」の魅力を紹介する。...
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