私はマンハッタンのチェルシー地区に住んでいます。チェルシーはこの20年ほどで随分変わりました。
1990年代前半頃は画家や小説家や音楽家や学生たちが多く住む閑静な街でした。今ではソーホー地区などから主流ギャラリーが移ってギャラリー街ができ、刺激的な場所に変化しました。
元食肉市場で閑散としていた西14丁目辺りは、高級レストランや有名ブティックが立ち並び、休日には散歩や買い物を楽しむ映画俳優やセレブたちとも遭遇できるトレンディースポットになりました。この地区の北側に隣接するチェルシーマーケットのビルは、1800年代後半は有名なビスケット会社の工場でしたが、閉鎖後は倉庫として眠っていたようです。ビスケット工場時代の貨物鉄道のレール跡を再開発してできたレクリエーションパークが現在のハイラインです。

ハイラインはウエストサイド・ハイウエーと並行して、14丁目から北20ブロック以上に渡って広がるスペースです。自由の女神のあるハドソン川の夕日を眺めながら散歩したりカフェで休憩したり、気楽に楽しむことができます。ウイットニー美術館も建ち、ますます文化ステータスの高い住宅地になりました。
ニューチェルシー地区は、古い貨物鉄道レールや歩きにくいでこぼこの石畳や倉庫ビルが上手に残されて生まれ変わりました。心地よいぬくもりは今も残っています。
近年多くの日系企業がマンハッタンから姿を消し、定住する日本人が少なくなって寂しさを覚えます。でもこの街は人種、性別、世代による差別が少なく、目標を決めてチャレンジすれば誰をもそっと受け入れてくれる寛容な環境が生き続けています。皆さんもチェルシーの空気を味わいにいらしてみてはいかがでしょうか。ホッと一息ついて自分を見つめ、新たなきっかけを発見できるかもしれません。
川城 悦子さん(新潟市出身)
(川城さんは高校卒業後、カリフォルニアの大学に留学。卒業後帰国して東京で就職し、数年後に再渡米。米国の航空会社で働いています)