3月下旬からサマータイム(夏時間)に変わり、一層日の長さを実感する日々です。この時期は日の光も明るくなり陽気が良いため、新緑や花が開くのを楽しむなど、庭園や公園に行く機会が増えます。
ロンドン市内には王室の管理する公園が九つあります。中でも敷地面積が10平方キロ、ニューヨークのセントラル・パークの3倍という、市内最大の広さを誇るのがリッチモンド・パーク。近くには世界で最も有名な植物園キューガーデンもあり、週末に家族連れやカップルなどでにぎわうのはもちろん、平日も犬の散歩やジョギングをする人、自転車レースの練習をしている人などさまざまな人が訪れます。
日中は門も開いているので時速20マイルであれば車も通り抜けられますが、公園全体が自然観察保護区域となっており、手つかずの自然も残っています。今でも650頭の鹿が生息し、池や湿地帯、小川、乗馬専用道などもあるため、公園というより森林、丘、野原といった方がイメージしやすいかもしれません。
また、青銅器時代からあったとされる古墳の場所にあるヘンリー8世の小山からは、今でも木々の間から16キロ先にあるセント・ポール大聖堂が見渡せ、まるで壮大な風景画を見ている感覚があります。
その広大な敷地に普段はひっそりとたたずむ「イザベラ・プランテーション」も名所で、毎年4月下旬から5月初旬にかけて、ブルーベルやツツジ、シャクナゲ、ツバキを見る人たちでにぎわいます。ツツジは1920年頃に植物ハンターのアーネスト・ウィルソンによって日本から持ち込まれた50本の久留米ツツジが最初だとされており、今では高山に生息する山ツツジや珍しい混合種のツバキやシャクナゲなども見ることができます。
一斉にツツジの花が咲き乱れる光景は圧巻で、池のたもとのツツジの壁は人気の写真スポットとなっています。在英日本人が英国の庭園を楽しみながら日本を懐かしむ場所でもあります。

川村 今日子(いまひこ)さん(英国新潟県人会会員)
(川村さんは2003年に渡英し、陶芸作家として英国や日本で活動。2015年には新潟三越で個展を開きました)