日本では、経済連携協定の影響で「自分たちの農業経営が苦境に立たされるのではないか」と心配する声が上がっているようです。
しかし、ここブラジルでは農産品の生産、販売は以前から「自由競争の原則の下、それが当然」との考えが一般的です。
そんなブラジルで立派に農業経営をしている日系の高倉ラウロさん、さよさん夫妻の例を紹介します。ちなみに2人は本県ともゆかりがあります。
高倉さんはぺルナンブコ州の州都から720キロほど内陸に入ったペトロリーナ市郊外で、ブドウやマンゴーなどを栽培しています。国内はもちろん、ヨーロッパや北米などにも輸出し、順調に収益を伸ばしています。
現在、45ヘクタールの土地でブドウを、40ヘクタールの土地でマンゴーをそれぞれ栽培しています。この作付比率は市場の見通しを見ながら割合を変えたり、他の作物に変えたりしています。
これらの作物は地元での消費量は限られていますから、それ以上の収益を上げるには限界があります。
以前は生産一筋だったそうですが、何とかこの壁を突き破ろうとしました。
そして、同じ日系農家5家族で組合をつくりました。ここで冷蔵保管や包装をし、同一ブランドでヨーロッパ、北米などに輸出を始めたのです。
冬には果物が採れないヨーロッパの市場に、いつでも作物ができる「常夏の国」ブラジルの果物を良い価格で輸出するシステムを作ったのです。
彼らは作物の栽培だけでなく、常に市場が求めるものを研究しています。例えばブドウの場合、「甘み」と「酸っぱさ」の微妙なバランスを求めるヨーロッパにはそれに適した品種を、「糖度が高いほど良い」というブラジルにはそれに合った品種を提供しています。
生産から販売までを担う6次産業化を体現している高倉さんは、朝起きると1時間ほど仲間とのテニスを楽しみ、それから朝の食事を取るそうです。
こうしたゆとりも仕事にプラスに働いているようです。

駒形 秀雄さん(新潟市東区出身)
(駒形さんは1933年生まれ。商社勤務を経てサンパウロに住んでいます)