ロンドンは商業、金融、メディア、教育、ファッション、娯楽などさまざまな分野において強い影響力を持つグローバル都市であり、そこに世界中から多様な人々が集まっている。また、ロンドンの金融街「シティ」は、欧州金融の中心地であると共にニューヨークと並び世界経済を先導している。
 

金融街「シティ」の高層ビル群

 そうしたロンドンの強みを背景に、最近スタートアップ(新興企業)が盛り上がりを見せている。スタートアップやテクノロジーというと米国シリコンバレーを思い浮かべる人も多いと思うが、ロンドンのスタートアップの特徴は、進んだ金融分野とテクノロジーを融合させイノベーションの実現を目指している企業が多いこと。また、優れた大学やメディア、ファッション、不動産などの業界と結びつき各分野で先進的なサービスが多数生まれていることだ。

 テクノロジーの街としてのロンドンは、2010年末に当時のキャメロン首相がイースト・ロンドンをシリコンバレーに倣った街にするという「テックシティー」構想を打ち出したことで急速に伸び始めた。最近では、グーグル、アマゾン、フェイスブックなど世界屈指のIT企業が続々とロンドンに進出している。

 ロンドンで盛り上がる理由は、(1)政府や市がソフト、ハード両面で環境作りを積極的に行っていること、(2)ロンドンの経済活動の大きさが世界中の優秀な人材を引きつけていること、(3)専門家によるビジネス構築プログラムや資金面での支援体制が充実していること、(4)地元の文化として起業や革新的な挑戦者を歓迎する雰囲気が大いにあることなどである。

 英国は目下EUからの離脱問題で揺れており、EUの移動と就労の自由が廃止されるとスタートアップの人材獲得に影響が出ると言われていたが、最近では、高い技術力とそこに集まる資金により影響は少ないという報道もある。

 次はどんな便利なサービスや技術力をスタートアップが提供してくれるのか、その登場を楽しみにしている。


粕川 博さん(長岡市(旧小国町)出身) 
 (粕川さんは1967年生まれ。フィリピンやフランスでの駐在経験を経て、現在は英国の日系通信会社に勤めています)