7年前、洗濯機のないマンハッタンのアパートからワシントンDCに引っ越した。

 ニューヨーク(NY)には築年数が100年以上のビルも多く、洗濯機の置けないアパートも多い。ワシントンDCは首都ではあるが、NYよりは田舎なので家賃も下がるだろう、と期待をしたが、家賃にほぼ変化はなく、アパートに洗濯機がある快適さで自分を納得させた。

 子供が小学生になり、昨年5月に再びNYに戻ってきた。今回の住まいは郊外ということもあり、今度こそは家賃が下がる!と期待したが、またも期待は外れた。

 私の住む街ポートワシントンは、ロングアイランドのナッソー郡の北に位置し、マンハッタンから電車で約45分の閑静な住宅街だ。湾には白いボートが並び、夏は海からの風が心地よい。マンハッタンに通勤が便利なこと、そして学校区が良いことで人気の街だ。米国では、この学校区というものがとても重要で、家の値段に大きく反映される。

 米国の公立学校は日本と同様、税金によって学校の運営がなされている。日本と異なる点は、固定資産税の一部として組み込まれている学校税を学校区に支払う必要があることだ。

 良い学校区は学校税がとても高額な分、豊富な予算で優れた先生を雇い、最新の設備を持ち、より良い教育カリキュラムを組むことができる。良い学校区は子供を持つ世帯に人気で需要が高い。よって、家の価格が上がる仕組みだ。

 2017年発表の「子育てにお金のかかる都市ランキング」では、1位ワシントンDC、2位ナッソー郡/サフォーク郡(NYのロングアイランド)、3位ウェストチェスター郡(NY)、4位NY市となっている。いずれも物価も高く、学校区や学校システムに定評がある地域だ。私が高い家賃に目を丸くしたのはこのためだった。

 高額な家の価格と学校税に文句を言いながらも、レベルの高い教育の享受のために頑張るのがNYの子供を持つ世帯の生活である。

ポートワシントンに面した湾(マンハセットベイ)の夏の夕暮れ時


相場 真紀子さん(三条市出身)
 (相場さんはマンハッタンの金融商品取引仲介の会社を退職後、専業主婦として2人の子供を育てています)