東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県内の地元地域では、地域活性化のためにと原発の運転再開を望む声が聞かれる。再稼働は地域の光となるのか。新潟日報社は長期企画で、新潟から原発を巡る疑問を考えていく。今シリーズでは地域経済に貢献しているのかを検証する。=敬称略=(12回続きの11、地域経済編「人口」の上)

<<前回・「継続性」の<下>を読む

 冬休み明けの1月9日朝、新潟県柏崎市郊外の曽地の住宅地に、中通小に登校する児童のあいさつの声が響いた。東京電力柏崎刈羽原発から直線距離で約4キロ。全校児童39人の中通小はいま、再編論議のただ中にある。

 2023年12月26日、柏崎市内の小中学校再編案を議論する審議会は、26年4月に中通小を含む小学校5校を2校に統合する案は妥当だと、市教育委員会に答申した。今後も児童の減少が続くと見込まれるためだ。

 「少子化の現実を直視したくはないが、突きつけられてしまった」。通学路の見守りに立つ80代男性はしんみりと口にした。

柏崎市内の中通小学校(中央)。柏崎刈羽原発から半径5キロ圏にある=2024年1月、柏崎市曽地(小型無人機から)

 国勢調査によると、2020年の柏崎市の0〜4歳人口は2482人で2010年に比べ868人、26%減少。総人口は8万1526人で9925人(11%)減った。増減率はいずれも新潟県内20市の平均を下回った。

 地域の将来を担う子どもの数を増やそうと、柏崎市は出産や子育て支援策を次々と打ち出す。23年度は1、2歳児の保育料無料化や男性が育休を取得した場合の奨励金制度などを始めた。

子育て支援施設でスタッフと子どもを遊ばせる母親=2023年12月、柏崎市栄町

 ただ、即効性があるわけではない。市長の桜井雅浩(61)は2023年12月の記者会見で「施策を随時展開しているが、少子化に歯止めがかからない厳しい現実がある」と述べた。

四国電力伊方原発=2023年12月、愛媛県伊方町

 全国の地方で進む人口減少。地域振興のためにと原発を誘致した各自治体も、例外ではない。中でも減り方の著しい自治体の一つが、四国電力伊方原発原子炉は全3基で、2基は運転を終了している。1号機は1977年、2号機は82年に運転開始。3号機の運転開始は1994年で出力は89万キロワット。福島第1原発事故後の2016年5月に1号機は運転終了となり、2号機は18年5月に運転終了となった。3基はいずれも加圧水型(PWR)で、東京電力柏崎刈羽原発の沸騰水型(BWR)とは異なる。がある愛媛県伊方町だ。

 四国の最西端にあり、2023年12月末現在の人口は8062人。「国策に協力すれば地元も潤う」と町議会が原発誘致を決めたのは1969年のことだ。原発関連や他の産業の発展を図ろうと努めたものの、働き手の流出は止まらなかった。

 2011年の東電福島第1原発事故を受け、全3基が停止した伊方原発は16年8月に3号機が再稼働したが、それから7年余りがたつ現在も地元の苦悩は続いている。

次回・「人口」の<下>を読む>>

<<前回・「継続性」の<下>を読む

×    ×

「地域経済編」の一覧へ

「住民避難編」の一覧へ