
東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県内の地元地域では、地域活性化のためにと原発の運転再開を望む声が聞かれる。再稼働は地域の光となるのか。新潟日報社は長期企画で、新潟から原発を巡る疑問を考えていく。今シリーズでは地域経済に貢献しているのかを検証する。=敬称略=(12回続きの7、地域経済編「波及効果」の上)
気候温暖な九州南端の鹿児島県でも、師走の海辺には冷たい風が吹いていた。鹿児島市から北西約40キロの薩摩川内市、東シナ海に面して九州電力川内(せんだい)原発鹿児島県薩摩川内市に立地する九州電力の原発。1号機と2号機があり、1基当たりの出力は各89万キロワット。いずれも加圧水型(PWR)で、東京電力の柏崎刈羽原発の沸騰水型(BWR)とは構造が異なる。3号機を増設する計画がある。2024年1月現在、2011年に発生した東日本大震災と福島第1原発事故により、具体的な動きは止まっている。はある。全2基、出力各89万キロワットの原発は鹿児島県内をはじめ九州全体に電気を送り、九電の供給力の1割ほどを担う。

川内原発1号機は2011年の東京電力福島第1原発事故を受けて全国の原発が停止福島第1原発事故後、原発に関する新たな規制基準が策定された。事業者が原発を動かすためには新基準を満たすことが求められるようになった。既設の原発でも原子力規制委員会の審査で「合格」とならなければ稼働できず、基準に適合するために必要な工事の実施や審査を受けるために一時的に全国の原発が運転を停止する状態となった。した後、15年8月に新規制基準東京電力福島第1原発事故を教訓に、原子力規制委員会が新たに策定した基準。2013年に施行された。従来の指針などが見直され、炉心溶融や放射性物質の大量放出といった重大な事故への対策や、地震、津波対策を強化した。原発を再稼働させるためには新基準に適合していることが条件となった。審査は原子力規制委員会が行う。新たに建設される原発にも適用されるほか、既存の原発にも適用される。下で初めて再稼働した。鹿児島県と薩摩川内市の同意薩摩川内市議会は2014年10月に再稼働に賛成する「陳情」を賛成多数で採択。同じ日に市長も再稼働に同意する意向を表明した。鹿児島県議会は14年11月に再稼働を求める陳情を賛成多数で採択、その後知事が再稼働への同意を表明した。「陳情」とは議会に対して住民が意見や要望などを提出できる制度。自治体によって位置づけや扱いが異なる。「請願」は陳情と似た制度で、法律的な位置づけが決まっている。両議会は「陳情」を採択する形で再稼働に同意する意志を示したとされる。その後、多くの自治体が薩摩川内市・鹿児島県と同じ手法で再稼働への「同意」を示している。を得て発電を再開したのは、停止から4年3カ月後のことだった。2号機も15年10月、4年1カ月ぶりに再稼働した。
「新型コロナウイルス禍もあって厳しかったが、最近はようやく長期停止前の水準に売り上げが戻りつつある」。薩摩川内市ホテル旅館組合長の福山大作(73)は実感を語る。

高台から望む薩摩川内市街地。川内川が市内を貫く。九州電川内原発は、河口近くにある=2023年12月、鹿児島県薩摩川内市
原発の再稼働後、宿泊業界に変化をもたらした要因の一つに挙げるのが、定期検査(定検)法律に基づき約1年(13カ月以内)に1回、運転を止めて必要に応じて行う原発の検査。点検の頻度などは機器ごとに異なり、一度の検査ですべての機器を点検するわけではない。検査の期間に基準はなく、通常は3カ月程度かけて行われる。検査は基本的に事業者が行う。定期事業者検査ともいう。の復活だ。定検は原発1基につき13カ月以内に1回、2〜3カ月間実施される。川内原発では通常運転時に約1800人が働き、定検でおよそ1000人の作業員が加わる。
鹿児島県北西部・北薩地域の中心地である薩摩川内市の人口は、県内43市町村中4位の約9万人。柏崎市よりやや多い。観光が主要産業でない街にとって、原発で働く人や定期的にとどまる人が地域経済にもたらす波及効果は小さくないと、福山はみている。
ただ、市民の反応はさまざまだ。同じサービス分野でも、薩摩川内市の中心部で飲食店を営む70代女性は「再稼働しても、思ったより客足が戻らない」と手応えのなさを口にした。

JR川内駅前=鹿児島県薩摩川内市
2024年1月現在、福島事故後に国内で再稼働した原発は12基。運転再開により、立地地域の経済状況に変化は生じているのか。薩摩川内市と、四国電力伊方原発が立地する愛媛県伊方町を訪ねた。
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