成年後の小林ハル役を演じた吉本実憂さんは、ハルさんの最後の弟子である萱森直子さんに唄と三味線を習い、吹き替えなしで演じた(2020映画 瞽女GOZE製作委員会提供)

現在、映画「瞽女(ごぜ) GOZE」が全国に先駆けて、新潟県内の映画館で上映中だ。

 瞽女とは、視覚障害がある女性の旅芸人。三味線を持って各地を巡り歩き、唄をうたった。江戸時代には関東信越、甲斐(山梨)、駿河(静岡)にいたとされるが、戦後には瞽女は新潟県の長岡と高田(現上越市)にのみ残った。「明治以降も県政府に弾圧されることはなく、村人も瞽女の活躍を長らく支援し続けた」ことがその理由だとされる(ジェラルド・グローマー「瞽女うた」岩波新書)。

 この映画のモデルは「最後の瞽女」と呼ばれた小林ハルさん(1900~2005年)。現在の三条市に生まれ、生後3カ月で失明。6歳で親方(師匠)に弟子入りし、8歳...

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