
あれは小学生のころだったか、家族で行った温泉旅館に古びた卓球台があった。風呂上がり、浴衣をはだけて打ち合いに興じた。
ペンホルダーなるラケットを知ったのはその時だった。ペンを持つように握るからペンホルダーという。日本式と中国式がある。握手をするように持つシェークハンドと呼ばれるラケットもある。
一昔前は地味な競技などとやゆされた卓球が、隆盛を極めている。
国内のトップ選手は世界の強豪と伍(ご)して戦えるようになり、プロとして活動する選手もいる。日本卓球協会に加盟する団体の登録人数も、新型コロナウイルス禍で減少したものの、それまでは増加傾向が続いていた。
競技が盛り上がりを見せる一方で、ペンの...
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