国政選挙について

衆院選

 衆議院選挙は小選挙区選挙と比例代表選挙を組み合わせた小選挙区比例代表並立制で行われる。小選挙区は最多得票者1人が当選。全国を11ブロックに分ける比例代表は政党・政治団体(政党等)の得票に応じて議席を配分し、各政党等の候補者名簿の上位から順に当選となる。定数は465人(小選挙区289、比例代表176)。

 政党等に所属して立候補する小選挙区の候補者は比例代表に重複して立候補できる。小選挙区で敗北しても、所属政党等が比例代表で獲得した議席数や名簿順位などによって「復活当選」も可能。複数の重複立候補者が同一順位の場合、小選挙区の当選者の得票数にどれだけ迫ったかを示す惜敗率が高い順に復活当選する。

 有権者は小選挙区では候補者名、比例代表では政党等の名称を書き、それぞれ1票を投じる。

 参議院選挙も比例代表選挙があるが、投票時は候補者名か政党等の名称のいずれかを書く方式で衆院選とは異なる。重複立候補も認められていない。

参院選

 参議院議員の任期は6年で議員の半数が3年ごとに改選される。都道府県単位の選挙区選挙(「鳥取・島根」と「徳島・高知」は2県合わせて1つの選挙区=合区)と、全国単位の比例代表選挙で議員を選出する。衆議院選挙と異なり、選挙区と比例代表の重複立候補は認められていない。2022年の参議院選挙以降、定数は248人(選挙区148、比例代表100)。

 有権者は1人当たり2票を投じる。

 1票は選挙区選挙で候補者名を書いて投票する。得票数の多い候補者から順に、各選挙区の改選定数に応じて当選する(改選定数が1の場合、最多得票者1人が当選)。

 もう1票は比例代表選挙で、政党・政治団体(政党等)の名称か候補者名のいずれかを書いて投票する。各政党等の議席数は得票数に応じて配分され、当選者は候補者名での得票数が多い順に決まる。また政党等は「特定枠」として、候補者名での得票数に関係なく優先的に当選できる候補者をあらかじめ決めておける。

解散

 衆議院議員の4年の任期満了前に議員の地位を失わせること。憲法54条は解散日から40日以内に衆議院選挙を実施すると規定。内閣が重要な政策課題で国民の信を問うための解散や、そのときの内閣に退陣を迫る内閣不信任決議案の可決、信任決議案の否決を受けた解散がある。憲法7条は解散を天皇の「国事行為」としているものの、実質的には首相に解散権があり〝伝家の宝刀〟ともいわれる。

 議員の任期が6年の参議院には衆議院のような解散はない。3年ごとに議員の半数を改選としているのは、議院の継続性を保つとともに国会機能の空洞化を防ぐことが目的。

「選挙戦」について

立候補(被選挙権)

 衆院選は25歳以上、参院選は30歳以上の日本国民であれば誰でも立候補できる(年齢は立候補時ではなく選挙の投票日が基準)。ただし選挙犯罪で被選挙権を停止されている場合などは除く。

 候補者の戸籍謄本か抄本、供託金(立候補する際に預ける金銭)の証明書のほか、比例代表は候補者名簿が必要。

選挙権

 2015年6月の公職選挙法改正で20歳以上から「18歳以上」に対象年齢が引き下げられた。被選挙権と同様、選挙犯罪で被選挙権を停止されている場合などは除外となる。

 選挙権は戦前、25歳以上の男性にしか認められていなかったが、戦後の民主化に伴い、1945年から20歳以上の男女全てに与えられ、46年の衆院選で適用された。

選挙運動の流れ

 選挙管理機関で必要な手続きを済ませて選挙運動がスタートする。

 街頭演説用ののぼり、演説会の立て札など、いわゆる「選挙の七つ道具」が配られる。

 選挙運動の主なものは演説、はがきの送付、新聞折り込みでのビラ配布、政見放送やホームページ上での政策主張など。国政選挙では政党のマニフェスト(政権公約)の冊子を配ることも可能。

 一方で参院選比例代表の「特定枠」に該当する候補者は個人演説会の開催をはじめ、個人としての選挙運動が禁じられている。

 資金の流れを透明化するため、選挙運動の収支を選挙後に選挙管理機関に報告しなければならない。

政党

 共通の政治的な目的を持つ人たちでつくる組織。法律上は国会議員が5人以上所属するか、直近の国政選挙で2%以上の得票があった組織を政党とし、この条件を満たさない政治団体と区別している。政党は政党交付金を受け取れるなど利点が多いとされる。

ネット選挙運動

 生活に浸透したインターネットを選挙運動に活用し、有権者の関心を高めようと、2013年4月に公職選挙法が改正された。

 それまでは選挙運動に利用できなかったフェイスブックやツイッター、ウェブサイトは有権者、政党、候補者に全面的に開放された。電子メールは政党と候補者だけが利用可能で、投票の呼び掛けや演説日程の告知に使われている。候補者を装う「成り済まし」をした場合には罰則があり、選挙権も停止される。

早朝・深夜の街頭演説禁止

 駅やスーパーの前で候補者が熱弁を奮う街頭演説は、候補者の肉声を聞く機会である一方、音量などを指摘される場合がある。このため午前8時から午後8時までに限られ、早朝や深夜は禁じられている。

 街頭演説で演説者は立ち止まる必要があり、歩きながらや走行中の車からはできない。電車、バスなどの交通機関、病院内も禁止。一方、政党名や候補者名などを繰り返す「連呼行為」は走行中の選挙カーからも許される。

 学校や病院の周辺では街頭演説、連呼行為とも音量を抑制し、長時間同じ場所で行わないよう努めなければならない。

一般有権者にも運動規制

 公職選挙法は候補者や政党・政治団体以外の選挙運動も厳しく制限している。

 「近所に住む○○ですが、△△候補に投票してもらえませんか」などど、住宅を一軒一軒訪ね歩いて投票を依頼する「戸別訪問」は一般の有権者も禁止されている。

 特定の候補者は政党を応援するための演説会は開けない。ただ選挙と関係ない町内会などの会合で協力を依頼することは可能。候補者の推薦人に名を連ねる以外、はがきによる運動もできない。

 一方、電話での運動は自由で、街頭や電車の中で出会った人への投票依頼もできる。未成年者、警察官などは選挙運動自体が禁止されている。

連座制

 買収などの選挙違反事件で、選挙運動を取りまとめる「総括主宰者」や選挙に関わるお金を管理する「出納責任者」らの有罪が確定した場合、候補者本人の関与がなくても連帯責任を問う制度。

 連座制が適用されると、候補者本人の当選が無効となり、同一選挙区からの立候補が5年間禁止される。

「投票」について

投票方法

 投票日に指定された投票所に行き、衆院選小選挙区と参院選選挙区は、当選させたい候補者1人の名前を所定の用紙に書いて投票する。衆院選比例代表は政党・政治団体(政党等)の名称、参院選比例代表は候補者名か政党等の名称を書いて投票する。

 期日前投票は、仕事やレジャー、冠婚葬祭など投票日当日に何らかの用事がある人が、住所地の市区町村で事前に投票する制度。これに対し、選挙期間中に本来の住所地で投票できない人が滞在先の市区町村で投票するといった制度は不在者投票という。

 さらに、仕事や留学で外国に住んでいる人も、現地にいながら国政選挙に投票できる。在外選挙制度と呼ばれる仕組みで、投票は在外公館に設けた投票所や郵送で行う。

無効票

 所定の投票用紙を使わなかったり、白紙だったりした場合は無効票となる。

 判読が難しいケースなどは疑問票となり、各開票所の開票管理者が、開票立会人の意見を聞いた上で有効か無効か判断する。

案分票

 同姓の候補者が複数いて、姓だけが書かれた票があった場合、同姓候補者の有効投票数の割合に応じて票を割り振る(同名の場合も同様)。

 例えば「新潟太郎」候補が6000票、「新潟次郎」候補が4000票を得て、「新潟」とだけ書かれ、どちらの候補に入れたか分からない票が500票あった。有効投票数の割合は

 太郎候補が0・6、次郎候補が0・4のため、「新潟」の500票は、太郎候補に500×0・6=300票、次郎候補に500×0・4=200票が割り振られ、総得票数は太郎候補6300票、次郎候補4200票となる。案分票によって小数点以下の得票数が発生することもある。

 複数候補者が同姓同名の場合、投票用紙に「年齢」や「所属(政党名、無所属)」など区別できる内容を記入するよう求めることがある。それでもどの候補に投じた票か区別できない際は、案分票として扱う。

その他

日本国憲法

 日本の最高法規。1946年11月3日に公布、47年5月3日に施行された。

 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原則とし、前文と計103条で構成。1条は象徴天皇制、9条は戦争放棄や戦力不保持を定める。

 連合国軍総司令部(GHQ)の草案を基に政府が大日本帝国憲法改正案を作り、帝国議会が修正した。

憲法改正手続き

 憲法の改正は、国会が発議し、国民投票で決まる。1947年の施行後、一度も改正されていない。

 改憲原案は衆院で100人以上、参院で50人以上の議員の賛成があれば提出できる。衆参両院の憲法審査会でそれぞれ審査され、過半数の賛成で可決、本会議に上程される。

 衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上が賛成すると、国会として国民に改憲を発議。60~180日の間に国民投票が行われ、有効投票総数の過半数の賛成で承認となる。

1票の格差

 選挙区ごとの国会議員1人当たりの有権者数が異なることにより、投票の価値に不均衡が生じる問題。人口の多い都市部ほど1票の価値は軽くなりやすい。例えば当選者1人の二つの選挙区があり、それぞれの有権者数が40万人と20万人だと格差は2倍となる。

 衆院選の1票の格差を巡り、最高裁は最大格差が2倍を超えた2009、12、14年の衆院選を「違憲状態」と判断。1・98倍の17年衆院選は「合憲」とした。21年衆院選は2・08倍で22年度中に最高裁が判断を示す見通し。

 参院選では、最大格差5・00倍の10年選挙、4・77倍の13年選挙をいずれも最高裁は「違憲状態」と判断。その後、2県を1つの選挙区にする合区の導入などを受け、最高裁は3・08倍の16年選挙、3・00倍の19年選挙はいずれも「合憲」とした。