2度にわたった水害を乗り越え、新発田市島潟に工場を新設した菊水酒造。移転から3年後の1972年、この地で国内累計販売が3億本を超す大ヒット商品が生まれる。日本初の生原酒缶「ふなぐち菊水一番しぼり」だ。
加熱殺菌や加水をしない生原酒は、菌が繁殖して品質劣化や腐敗が起きやすい。フレッシュで濃厚な味わいは「こんなにおいしい酒がなぜ売っていないのか」と蔵の見学者らの人気を集めたが、流通環境や酒造技術が今より劣る当時、商品化は「ご法度」だった。
リスクが高く、市場も確立されていない。それでも生原酒の販売に挑んだ背景に、ラグビー日本代表監督や早稲田大ラグビー部監督を務めた故・大西鉄之祐(てつのすけ)氏の...
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