右肩上がりで売れていた県産日本酒だが、1990年代後半になると陰りが見えてくる。新工場を構え、増産体制を築いて間もない菊水酒造(新発田市)は、日本酒の売り上げが97年の約64億円をピークに停滞が続いた。現社長の髙澤大介氏(63)は「何でだろうと考え、夜も眠れなかった」と当時の心境を語る。

 そんなころ、大介氏は家の土蔵に眠っていた車のカタログを見て気付く。車が「高根の花」だった50~70年代、カタログに記されているのは速度や馬力など主に車の性能だった。だが、一般家庭に車が普及した90年代には、車を持つことで生活がいかに豊かになるかに視点が移っていた。

 「日本酒は消費者の生活の真ん中にありながら...

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