
バイク乗りのバイブルとも言われる漫画「キリン」(東本昌平著・少年画報社)は、バイクと交わらずに生きる人や乗るのをやめた人を「向こう側」、乗り続けている人を「こっち側」と表現した。
「こっち側」にもいろいろある。アグレッシブに乗りこなしたい欲求もあれば、気ままさが心地いいという楽しみ方もある。
加速力が好きで250ccの2ストロークバイクばかり乗り継いでいた若い頃、時折、バイクに「トロトロ運転すんなよ」と乗り方を強要されるような感覚があった。高性能なバイクに操縦させられているような。
そんな記憶が呼び起こされたのは、新潟県阿賀野市女堂の林野で毎年、バイクのトライアル選手権が開かれていると聞き、関係者を訪ねた時だった。
「バイクに乗せられているんじゃなく、どう乗りこなすかということ」
マシンの操縦技術を競い合うトライアル競技について熱っぽく語られた。
時速300キロを超えるロードレースや未舗装路で豪快なジャンプやターンを繰り返すモトクロスなど、華やかなスピード系と比べややマイナーだが、50代から始める人も多いという。
百聞は一見にしかず。9月下旬に女堂オフロードパークで開かれたMFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)の関東トライアル選手権シリーズ第10戦に密着した。そこで見た「こっち側」の人々は-。
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