
まばゆく魅了するゴールド、落ち着き理知的なシルバー。金銀財宝と表現されるように、金と銀は古今東西、多くの人の心を捉えてきた。1月のおとなプラスでは、人間が最も美しいと感じるという黄金比(1対1・62)を特集したが、その取材の過程で、白銀比(1対1・41)の存在を知った。日本文化に根付き、日本人に好まれる比率だという。白銀比の魅力を探った。
(上越支社報道部長・阿部義暁)
ポイントは「ひとよひとよに…」 日本人は細長くない方が好き?
これぞ白銀比!な国民的キャラは…
1対1・6180339……と永遠に続く黄金比は、古代エジプトのピラミッドやギリシャのパルテノン神殿、ミロのビーナスなどに現れる。ヨーロッパ文明の中で大きな存在感を示している上、自然界で姿を見せることがあり「神聖比率」と呼ばれてもいる。
対して、白銀比は1対1・41421356……。子どもの頃に「ひとよひとよにひとみごろ」と覚えた平方根のルート2だ。
芸術を科学的観点から研究する東京工芸大芸術学部教授の牟田淳さん(55)は、白銀比は日本人に好まれる比率だと指摘する。「白銀比は飛鳥時代の寺院に取り入れられている。近年は多くのキャラクターに現れている」と解説する。

牟田さんによると、日本文化と白銀比の関係についての考察は、美術評論家の故・柳亮氏が1977年に出版した「続黄金分割-日本の比例- 法隆寺から浮世絵まで」(美術出版社)が原点だ。
柳氏は仏教伝来とともに1対ルート2の比率が大陸から持たされたと説く。593年に建立された大阪・四天王寺の伽藍(がらん)配置にその比率が見て取れる。607年建立の奈良・法隆寺は凸型の伽藍配置だが、創建当時は回廊が長方形で縦横比が1対1・41だった。

牟田さんは、奈良時代の作品として有名な奈良・興福寺の阿修羅像にも白銀比が含まれているとする。「実は柳氏は白銀比とは言わず、ルート2矩形(くけい)と表現している。白銀比と言われ始めたのは20年前くらいからで、特にキャラクターの分野で注目されてきた」と話す。

◆専門家も「驚いた」…全身白銀比の「ぼく、ドラえもん~」
「ぴったりすぎて驚いた」と牟田さんが話すのが、国民的漫画「ドラえもん」だ。正面から見たドラえもんの全身は白銀比そのものだ。連載開始は1969年だから、柳氏の著書よりも8年早い。白銀比を念頭にデザインしたとは考えにくい。
さらに「となりのトトロ」や「アンパンマン」「ハローキティ」など、ほぼ白銀比が当てはまるキャラクターは枚挙にいとまがない。
私が勤務する新潟県上越市で白銀比キャラを探すとすぐに見つかった。市のPRマスコット「上越忠義隊けんけんず」の「謙信くん」だ。

どうして、こんなに白銀比キャラが多いのか。
牟田さんが...