胎児性患者として認めてほしいと訴える大戸迫智さん(前列右から2人目)と姉の坂本みゆきさん=4月30日、熊本県水俣市
胎児性患者として認めてほしいと訴える大戸迫智さん(前列右から2人目)と姉の坂本みゆきさん=4月30日、熊本県水俣市

 解決の糸口が見えない水俣病問題。全容解明や患者の救済に必要とされる健康調査はなぜ行われてこなかったのか、今後どのように被害と向き合うのか。健康調査を巡る歩みと調査の在り方を軸に、熊本と新潟の公害被害の現場から解決への課題を探った。(5回続きの4)

<3>疫学的知見の採用可否で分かれた判決…患者認定に立ちはだかる“制度の硬直化”

 母親の胎内でメチル水銀の影響を受けた水俣病胎児性患者。加齢に伴い身体機能が低下する例が目立つが、医学的な解明は進んでいない。新潟県で「第二の水俣病」が公表された1965年6月12日、熊本県水俣市で生まれた大戸迫(おおとさこ)智さん(60)は歩行器で歩けていたが、この2年で悪化。水俣病公式確認70年を前にした今年4月の懇談では石原宏高環境相と車いすで対面した。「体全体が悪くなってきた。早く認定してほしい」と訴えた。

 大戸迫さんは軽度の知的障害があり歩行が不自由で、幼い頃に脳性まひと診断された。...

残り1078文字(全文:1488文字)