福島第1原発事故による遅発性PTSDの実態を語るドキュメンタリー監督の島田陽麿さん=東京都
福島第1原発事故による遅発性PTSDの実態を語るドキュメンタリー監督の島田陽麿さん=東京都

 福島県では、東京電力福島第1原発事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。で苛烈な体験をし、時間がたって発症する「遅発性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」に苦しむ人たちがいる。こうした実態の社会的認知は進んでおらず、支援の手が足りていない。福島原発事故から14年。現地で医師や医療従事者を取材したドキュメンタリー監督の島田陽磨さん(49)=埼玉県=は「今後さらに増える可能性がある。心の復興は全く進んでいない」と警鐘を鳴らす。(報道部・長野清隆)

-福島県の現状を教えてください。

 「防潮堤や施設などインフラ面の復興だけが報じられることに違和感があった。それをきっかけに2020年から3年間取材してみて分かったことは、精神疾患に苦しむ人がいかに多いかだ」

東日本大震災2011年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源にマグニチュード(M)9.0の地震が発生し、最大震度7を観測。東北地方を中心に大津波が発生した。東京電力福島第1原発は電源を喪失して炉心溶融(メルトダウン)が起き、原子炉建屋が水素爆発で損壊、大量の放射性物質が拡散した。震災関連死を含む死者、行方不明者は計2万2千人超。で被災した他県と比べてどうですか。

 「福島で顕著な傾向がある。原発事故があったためだ。過去の災害でも避難の回数が4回を超えると心の健康を損なう人が増えるのは分かっている。福島の場合は、差別やいじめの問題も加わり、原発事故特有の避難生活が心の健康に深刻な影響を及ぼしている」

 「福島県内の児童相談所で虐待の報告件数が...

残り1009文字(全文:1482文字)