再稼働の準備が進められている東京電力柏崎刈羽原発の6号機(右)と7号機=刈羽村
再稼働の準備が進められている東京電力柏崎刈羽原発の6号機(右)と7号機=刈羽村

県議会9月定例会最終日の本会議

 花角英世知事が21日、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働容認を公表した。注目されていた「県民の意思を確認する」手法については県議会を選択。2026年5月に予定する知事選や出直し選挙では「県民の分断が深まる」という。県議会の野党系議員や市民団体からは知事選を望む声もあり、原発問題を巡る混乱は尾を引く可能性がある。

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 「今の制度上、知事の職務を止められるのは県議会しかない」。21日の臨時会見で花角知事は、県議会で自らの信任を問う理由をこう説明した。

 花角知事は2018年の初当選以来、自らの示した決断について「県民の意思を確認する」とし、「信を問う方法が責任の取り方として最も明確で重い」と繰り返し強調。知事選を想定しているかのような印象を与えていた。

 臨時会見で花角知事は、県民投票条例案を審議した4月の県議会臨時会で参考人として意見を述べた大学教授の見解を引き合いに「投票(知事選)は傷が深まる」と指摘。県民の分断が進むとの懸念を示唆した。その上で「原発と向き合うのは地域にとっては深刻な重い課題と思うからこそ、私自身の仕事のやり方も含めて評価していただきたい」と自らの判断や県議会で県民の意思を確認することへの理解を求めた。

 県議会は、花角知事の後ろ盾となっている自民党県議団が過半を占めており、「蜜月」の知事に不信任を突きつける可能性は極めて低い。知事の判断にお墨付きを与え、再稼働を支持する見通しだ。

 花角知事は県議会の信任を得た上で再稼働を求める国に対し、年内に容認の意向を伝える方針だ。東電は26年1月にも再稼働するとみられる。

 一方、県議会の野党系会派は「知事を選んだのは県民。信を問うべきは県民だ」などと反発。再稼働に反対する市民団体も知事選での審判を求めている。

 来年5月が見込まれる知事選で再稼働問題が再燃し、争点になるとの見方は強い。自民県議も警戒している。花角知事はこの日の臨時会見で3選出馬の可能性を問われ、「今のところそれは分からない」と述べるにとどめた。 

柏崎市長「決断に敬意」、刈羽村長「前進、よかった」

 花角英世知事が21日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を容認すると表明したことに対し、既に再稼働への理解を表明している立地自治体の柏崎市と刈羽村の両首長は賛意を示した。

 柏崎市の桜井雅浩市長は「心から花角知事の決断に敬意を表する。厳しい時間を過ごしたものと拝察する」とおもんぱかった。

 一方で、東電福島第1原発事故を巡る三つの検証など、県の取り組みに対し「時間をかけて丁寧にやったと思うが、少し合理性に欠ける時間のかけ方ではなかったか」とも語った。

 刈羽村の品田宏夫村長は「ひと区切りがついたということは(再稼働へ)前進したということで、よかったと思う」と淡々と受け止めた。県民意識調査などの過程を踏んだことについては「決断するために、それだけの時間が必要だったのだろう」と推し量った。

新潟市、上越市、長岡市、佐渡市の市長の見解は

 県内の首長からは、これまでの県の取り組みを踏まえ、知事の判断を尊重する声が上がった。一方、県民の理解を深めるため、さらなる努力を求める意見もあった。

 新潟市の中原八一市長は、県が実施した県民意識調査などを挙げ、「多様な意見や要望を踏まえ、知事が判断したものと考える」とコメント。県には今後、東電の監視や広域避難計画の実効性の確保などに向けた取り組みを求めた。

 市域の一部が避難準備区域(UPZ)にかかる上越市の小菅淳一市長は「熟慮して出した知事の判断を尊重したい」と強調。再稼働容認に当たり、知事が国に対応を求めるとした7項目については、14日に開かれたUPZの首長との意見交換会で伝えた要望が盛り込まれたとして評価した。

 一方、長岡市の磯田達伸市長は再稼働の賛否が割れている県民意識調査の結果を念頭に「民意を踏まえ、市民、県民の理解が深まるよう、さらに努力すべきだと直接知事に伝えてきた」とコメント。7項目については「国の対応の確認方法など、知事から説明を受けたい」と求めた。

 また佐渡市の渡辺竜五市長はコメントで「長い時間をかけ、検証を重ねた上での判断」とし、市が求めてきた安全性の県民への理解促進なども求めた。 

「しっかり受け止めたい」東電・小早川社長、知事会見前に取材に応じる

 東京電力の小早川智明社長は21日、柏崎市で花角英世知事の会見前に、報道陣の取材に応じた。

 知事が14日に柏崎刈羽原発を視察した際に、県民の再稼働への理解を得るには時間がかかると発言していたことを挙げ、「安全をしっかりと築き、地域の信頼を得るために一歩ずつしっかりと進むことが重要だと考えている」と語った。21日の知事会見での発言については「一つ一つしっかりと受け止めたい」とした。 

◆知事の表明受け東電コメント「判断厳粛に受け止める」

 東電は知事の表明に対し「判断を厳粛に受け止めている」とのコメントを発表。原発の安全性向上などに一層取り組む考えを示した。

県内各党「慎重な対応を評価」「信を問うなら県民に」

 花角英世知事が21日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を容認した上で、県議会で県民の意思を確認すると表明したことに対し、自民党県連などからは評価する声が上がった。一方、立憲民主党県連は「『信を問う』のならば県民投票か知事選だ」と批判した。...

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