柏崎刈羽原発7号機での核燃料の装塡作業。使用済み燃料プール(右)から燃料取り換え機で運び、原子炉内へ燃料を入れた=2024年4月
柏崎刈羽原発7号機での核燃料の装塡作業。使用済み燃料プール(右)から燃料取り換え機で運び、原子炉内へ燃料を入れた=2024年4月

 原子力規制委員会原発推進を担う経済産業省から安全規制の役割を分離させ、原子力規制に関する業務を一元化した組織。東京電力福島第1原発事故を受けて発足した。国家行政組織法3条に基づき、人事や予算を独自に執行できて独立性が高い「三条委員会」として環境省の外局に位置付けられる。衆参両院の同意を得て首相が任命する委員長と委員4人で構成する。が東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。(新潟県)に出していた事実上の運転禁止命令原子力規制委員会が、東京電力に対して出した「是正措置命令」のこと。柏崎刈羽原発でテロ対策の重大な不備が相次いだことを受け、原子炉へ燃料を入れることや、核燃料を移動させることを禁じた。原子炉に核燃料が入れられなければ原発を動かすことができないため、実質的には運転を禁止したことになる。命令は2023年12月に解除された。が解除されてから、2024年12月27日で1年がたった。国が原発の最大限活用を掲げる中、東電は7号機に核燃料を装塡(そうてん)するなど、2024年は再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。の準備を着々と進めた。ただ、再稼働の是非を巡っては、柏崎市、刈羽村が前向きな意向を示す一方、新潟県は判断材料がそろっていないと慎重な姿勢を示し、自治体間の考え方には温度差がある。東電は再稼働の前提として地元の理解を得たいとするが、再稼働の見通しは依然立っていない。(柏崎総局 田中渓太)

 「自律的な改善が見込める状態になった」。規制委は2023年末、テロ対策上の重大な不備柏崎刈羽原発では、2021年2月時点で、侵入検知設備が計16カ所で故障し、うち10カ所は代替措置が不十分なため無断立ち入りができる状態だったことが判明した。原子力規制委員会は安全重要度を最悪レベルの「赤」と評価し、21年4月に柏崎刈羽原発での核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令を出した。20年9月には、運転員が同僚のIDカードで中央制御室に入る問題なども起きている。を受けて、柏崎刈羽原発に出していた事実上の運転禁止命令を解除した。7号機は再稼働の前提となる規制委の審査には合格しており、24年は再稼働に向けた動きが一気に進むかに見えた。

 再稼働を巡る地元自治体の同意新規制基準に合格した原発の再稼働は、政府の判断だけでなく、電力会社との間に事故時の通報義務や施設変更の事前了解などを定めた安全協定を結ぶ立地自治体の同意を得ることが事実上の条件となっている。「同意」の意志を表明できる自治体は、原発が所在する道県と市町村に限るのが通例。日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)を巡っては、同意の権限は県と村だけでなく、住民避難計画を策定する30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)内の水戸など5市も対象に加わった。が焦点となる中、国は24年の年明け早々に新潟県や柏崎市、刈羽村に再稼働の同意を要請しようとしたが、元日に能登半島地震2024年1月1日午後4時10分ごろに発生した石川県能登地方を震源とする地震。逆断層型で、マグニチュード(M)7.6と推定される。石川県輪島市と北陸電力しか原発が立地する志賀町で震度7を記録し、北海道から九州にかけて揺れを観測した。気象庁は大津波警報を発表し、沿岸部に津波が襲来した。火災が相次ぎ、輪島市では市街地が広範囲で延焼した。が発生。東電福島第1原発での汚染水漏れのトラブルもあり、要請は3月にずれ込んだ。

◆7号機は核燃料装塡 廃炉計画は不明確なまま

 国の動きに合わせるように、東電も再稼働の準備を加速した。4月、「設備の健全性確認のため」として7号機の原子炉への核燃料装塡(そうてん)を開始。6月までに作業を終え、再稼働に向けた技術的な準備を整えた。

 8月には小早川智明社長が桜井雅浩市長と会談。市長が再稼働の条件としてきた廃炉計画の明確化について...

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