大阪公立大の除本理史教授
大阪公立大の除本理史教授

 東京電力福島第1原発事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東電福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。の避難者らによる新潟訴訟東京電力福島第1原発事故で福島県から新潟県に避難を強いられたとして、約800人の住民らが国と東電に原告1人当たり1100万円の損害賠償を求めた訴訟。2013年7月の第1陣を皮切りに第4陣までが提訴。新潟地裁は21年6月の判決で国の責任を否定し、東電にのみ一部賠償を命じた。原告、被告の双方が控訴し、22年8月から東京高裁で控訴審が始まった。控訴審原告約790人が一審の認容額に加え、1人当たり300万円を求めている。口頭弁論は2022年8月に始まった。で、東京高裁は4月19日に出した判決で、東電に対し避難指示区域東京電力福島第1原発事故当初、半径20キロ圏内に避難指示が出された。その後、原則立ち入り禁止を維持する「帰還困難区域」、避難を続けながら計画的に除染する「居住制限区域」、住民の早期帰還を目指して優先順位をつけて除染する「避難指示解除準備区域」などに再編された。外の原告に一審新潟地裁判決より高い水準の慰謝料の支払いを命じた一方、国の責任を否定した。判決が持つ意義や賠償のあり方について、大阪公立大の除本理史教授(52)=環境政策論=に聞いた。

-2022年に国の賠償基準が見直され、「第5次追補居住制限区域と避難指示解除準備区域では長期避難でふるさと(生活基盤)が変容したとして、新たに1人当たり250万円の賠償を認める。事故直後に過酷な避難を強いられた第1原発20キロ圏の住民には30万円を加算する。避難指示が出されなかった福島市など福島県内23市町村では、子どもと妊婦以外の自主避難者に関し、慰謝料の対象期間を延ばして20万円とするなどの内容。」として避難指示区域内の賠償が拡充された中で下された今回の判決を、どう評価しますか。

 「判決で示された慰謝料は...

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