『世界陸上』への思いを語った(左から)織田裕二、今田美桜 (C)TBSテレビ/鈴木大喜
『世界陸上』への思いを語った(左から)織田裕二、今田美桜 (C)TBSテレビ/鈴木大喜

 34年ぶりに東京開催となる『世界陸上』(9月13日~21日/東京・国立競技場)が間もなく開幕。1997年から2022年まで13大会連続でTBSテレビの世界陸上メインキャスターを務め、東京2025世界陸上では大会スペシャルアンバサダーを務める俳優の織田裕二(57)、TBS世界陸上アンバサダーを務める俳優の今田美桜(28)が、このほどインタビューに応じた。約200ヶ国・地域から2000人以上の選手が東京に集い、各競技で世界一を目指す『世界陸上』への思いを聞いた。

【写真】『世界陸上』“超人BIG7”と写真に収まる織田裕二&今田美桜

――今の心境は?
【織田】先日、日本に帰ってきたんです。成田からの帰り道で首都高を通った時に電光掲示板に『9月14日、15日 世界陸上マラソンのため出入口封鎖』と書いてあって。それを見て『あぁいよいよなんだな!』と改めて思いました。『世界陸上』と書いてあって、なんかうれしくなっちゃった。どこが封鎖されるのかは分からないので、ご確認ください(笑)。

【今田】テレビで『世界陸上』の情報をよく見るようになってきて、私もドキドキしてきました。緊張してます。選手のお話など、いろいろ読んだり、見たりしていて、楽しみになっています。

――それぞれ、どうやって『世界陸上』を伝えていきたいか?
【織田】初めての取り組みなんです。今まではキャスターとしてやっていたので。今回の「東京2025世界陸上 スペシャルアンバサダー」いうのは初めて。どうなるのか。やってみないと正直分からないというのもあって、楽しみにしています。あと恐れています(笑)。ちょっとお手伝いって言ってたつもりが、結構ガッツリかもしれない。体力的にすごく大変なので大丈夫かな、と。『世界陸上』は9日間の電波ジャックみたいなものなので。でも、選手も戦っているので、同じく我々も戦います。

【今田】私は本当に初めてなので。分からないことも多いかもしれないですけど、こんなにも頼もしい織田さんが隣にいてくださるので、アドバイスを聞きながら。間近で見られるのが、すごく楽しみですし、その熱さをテレビを超えて届けられるように頑張りたいです。

【織田】楽しみ!思ったことをバーンって出してくれた方が面白いと思う。

【今田】頑張ります!

――織田さんから具体的にアドバイスを送るとすれば?
【織田】何もない!僕がアドバイスなんておがましいというか。教えられるものでもないし。思った感情をぶつけてきただけなので。あとは、突然時間が押したり、巻いたりするんです。1分しゃべる予定が急に10秒でまとめなきゃいけなくなったり。逆に何分話せばいいのか分からない時もあったり、天候によっては一気に競技がなくなってずっとしゃべり続けなきゃいけなくなったり。

【今田】緊張してきました…。でも、私自身も織田さんに言っていただいたように、全力で楽しみたいと思っています!

――楽しみにしている選手は?織田さんは絞って桐生祥秀選手、守祐陽選手、サニブラウン アブデルハキーム選手が選考された日本代表の男子100mの展望をお願いします。

【織田】絞らないと時間が足りないので(笑)。代表に3人しか選ばれないのは本当に悔しい。個人的にはあと3人出してあげたい。それぐらい悔しいです。特に柳田(大輝)なんか、ものすごく今の調子がいいし、多田(修平)のスタートダッシュは相変わらず好きだし、小池(祐貴)も気になるし…。そういう意味では、誰が選ばれるか分からないけどリレーでその悔しさを出してほしい。今まで過去見てて、これだけ日本人選手が粒ぞろいでうれしいんだけど、悔しい。もったいない…。ただ、選ばれた3人に、今はやってくれっていう思いです。

【今田】本当にどれも楽しみです。今は久保凛選手(女子800m)がすごく気になっていまして。高校生という年齢ですし、いろいろ見させていただいた時に「自分よりもこんなに若い子が!」と、すごく衝撃を受けて。楽しみにしています。

【織田】今、何歳なんですか?

【今田】28歳です。

【織田】陸上選手としては、そのぐらいの年齢が1番、脂が乗っているから、ちょうどいい年齢ですね(笑)。陸上をやっていたんだよね?

【今田】部活程度ですけど。

【織田】それは心強いです。やっていた人の言葉は、やっぱり違うんですよ。

【今田】活かせることがあればいいなと思います!

――東京で行われる大会で初めて『世界陸上』を見る人もいると思います。注目ポイントを絞るとすれば。
【織田】(苦悶の表情で悩みながら)競技によってなんですけど、準決勝が面白い競技もあるんです。例えば100m。そういうものは意外と準決勝が面白いんですよ。決勝だけ見れば十分というのは大間違いで。100mに関しては絶対に準決勝を見るべきだと思います。準決勝に、決勝以上の気持ちで臨んでくる選手もいるんです。選手の実力が拮抗していると、なおさら準決勝で「あの人が落ちた!」となることが起きるんです。決勝は8人しか残れないので。ちょっとしたミスでも取り返しつかないのが100mだったりするので。ちょっとしたミスが許されない競技で言うとハードルですよね。本当にミスが許されないし、ミスしやすい競技でもある。極端に言ったら僕、ハードルは予選でわかるんですよ。「決勝に行くだろうな」と。100mでは余裕のある選手がちょっと手抜きするじゃないですか(笑)。でも、ハードルは見ている限り、それがない気がするんです。抜くところがあまりない。予選を見ると決勝のラインアップが想像できる。誰が勝ちそうだ、誰が調子いいんだ、とわかるんです。だから意外と準決勝、予選が面白い競技もありますよと伝えたいですね。

個人的に選手を追いかけたりもしています。(シドニー・)マクローフリンだったら、マクローフリンがどんな表情して、どんな面持ちで入ってきたのかな。推しじゃないけど、好きな選手がいるんです。その選手のライバルも必ずいるので、その2人や3人を見てたりとか。でも、気になる人がほかに現れたりもする。その予想外が面白い。それぞれのドラマを数重ねると覚えてたり、思い出されたりしちゃうので。そんな楽しみ方もします。あとコーチたち。今回は東京なので、かなり難しいと思うんです。ヨーロッパでやるのとは違うので。例えばアメリカは層が厚いから、それぞれ100mと200mは選手を分けてくるかなとか。でも、ノア(・ライルズ)は絶対に両方やりたがるとか。個人的な思いとコーチが立てたい作戦を考えたり。特にアメリカは選手層が厚い分、それができちゃうんですよ。カナダでは無理なので、たぶん(アンドレ・)ドグラスに「すみませんけど両方お願いします」みたいなことになっちゃうんだろうけど(笑)。そんな各国の駆け引きとか、アメリカはどう出てくるのかな、というコーチたちの作戦も気になります。

【今田】棒高跳びは、どれほど高いところまで跳ぶのかが気になります。6メートル以上跳ぶのは、どういうことなんだろう、と。同じ人間だけど、やっぱり超人の皆様だから気になります。

【織田】棒高跳びはやったことあるの?

【今田】やったことはないですけど、棒は持ったことあります。(「ボックス」と呼ばれる地面の穴に)差せたこともないです。

【織田】あの重たい棒を持って走って、あの小さいところに差すのは難しい!僕は棒高跳びが唯一複雑な競技だなと思います。他はシンプルじゃないですか。「走る」とか「跳ぶ」とか分かりやすいんだけど。棒高跳びは横に行って縦に行って、にょんとなるので。

【今田】選手で言うと(400mハードルのカルステン・)ワーホルム選手です。(年の差39歳で話題となった)オラフコーチとの関係性もすごく素敵だなと思います。オラフコーチも楽しみです。大好きになってインスタグラムとか見ちゃいました!

【織田】そういう意味じゃ、北口(榛花)と(セケラック)コーチとの関係も。北口が本当に分かりやすいんで(笑)。「表情が調子悪い…。どうしよう」と、うまくいった時のギャップがすごいので。コーチと話している間とか、そういう表情も面白いかもしれないですね。

【今田】目が離せないんですね。

【織田】普通は調子とか顔に出さないんだけどね(笑)。あれだけ出して勝っちゃうんだから、北口さんはすごい。ケガもあって心配でもあるけど楽しみです。ガウト・ガウトという17歳のオーストラリアの選手も出てきたんです。まだ今年の決勝に行けるかわからないですけど、絶対に10年の間に来る選手。久保凛ちゃんもそうだし。今は情報が取りやすいので先に推しを作るのも手かもしれないですね。言い出すと止まらなくなっちゃう!

【今田】ずっと織田さんの話を聞いていたくなっています!

――毎回、織田さんは下調べで膨大な時間を使っているとお話されていましたが、今回はいかがでしょうか?
【織田】まだまだ十分じゃない。東京大会ということもあって、いつもより逆に日本の大会を見たりして日本選手をいつもよりは少し多めに知れました。でも、全米とかダイヤモンドリーグとかを見られていない。空気感を現地で感じて光っている選手とかは正直見られてない。だから逆に今まで見ていた選手で気になっている選手がどうなったかな、というのがある。あとはそこに全く分からなかったけど予選を見て「何この選手!」と出てくるのが楽しみでもある。

――これまでで下調べの状況から大きく超えてきた選手で覚えているのは誰ですか?
【織田】マクローフリン、アリソン(・フェリックス)もそうですけど、その現場で「すごい!なんだ、この人!」というオーラを発していた。マクローフリンは、ここ最近では久々に見たなっていうぐらい「この人なんだ!」というオーラでした。ちょっと普通じゃないって思う空気を持っていました。その空気感が今回出たって思うのは、彼女は400mハードルのチャンピオンであり、世界記録保持者なんですよ。その競技に出ないってどういうこと、と(笑)。ハードルなしの400mは似ているようだけど、実は全然違う競技だっていうんです。400mハードルの選手から400mの転向は難しいって言われているらしく、ハードルを10回跳ぶリズムが抜けないんですって。ハードルを跳ぶリズムが染み付いちゃって、それがないと400m走ってしまうらしいんです。全くの別競技というぐらい難しいのかもしれない。でも、そこへチャレンジしてきた。そこがいいなってと思います。

400mハードルに加えて400mもちょっとチャレンジする、だったら分かるじゃないですか。それを400m一本で。でも、3年前のオレゴンの時ににも「この人は想像つかないことしてもおかしくない人。才能がすごすぎる」と思った。大谷翔平選手じゃないけど、ピッチャーだけじゃもったいない、バッターだけじゃもったいない、という人なんです。僕は400mだけで終わると思ってない。環境がヨーロッパとかカラッとして体力の回復が早いところでやらせれば、いくつもの競技を掛け持つ可能性もある。今回はできないけど、200mとか幅跳びとか、全然違うところをやってもおかしくないぐらいの超人じゃないか、いろんな才能あふれている人なんじゃないのかと勝手に思っています。それぐらいの才能の持ち主なんじゃないかなと勝手に思うオーラを発していた。彼女のこの後も動向を見ていたい、彼女の競技人生をずっと追いかけてみたいと思うような人です。アリソンもそうでした。彼女も400mから200m、100mとなって、また400mとなった。そのアリソンが彼女のメンタルコーチやっているらしいんです。アリソンも来るということですね。コーチをしているアリソンもちょっと見たい。(関係者をチラ見しながら)アリソンもカメラで抜いてくれるとうれしいな~。(会場に笑い広がる)。他にもそういう選手がたくさんいる。ジャマイカのシェリー=アン(・フレーザー=プライス)が今回出られるって。今回が最後の『世界陸上』になると思う。シェリー=アンが負ける姿を想像できない。3位で終わった(ウサイン・)ボルトのようになるのか、勝ち切ってそのまま有終の美になるのか。すごく楽しみが増えています。

――『世界陸上』にも、いろんな楽しみ方があります。
【今田】アンバサダーをやらせていただくまでは、コーチの関係性などに、あまり注目してきたことがありませんでした。私は今回、いろいろな情報に触れて、選手の皆さんのプライベートな部分も見えてきたので、より面白いなと感じるようになりました。さらに応援したくなる気持ちだったり、期待がすごく高まったので、そういうところも注目しながら大会を頑張りたいなと思っています。

――織田さんは高速が封鎖されて『世界陸上』が間近だと実感したと話していました。今田さんは『世界陸上』の開幕が間もなくだと感じた瞬間はありますか?
【今田】PRなどで織田さんをたくさん見かけるようになって、『世界陸上』がいよいよだなと実感しています。私は1997年生まれで、織田さんが『世界陸上』のキャスターになられたのも1997年。それを考えると、『世界陸上』=織田さんになるぐらい、ずっとやられている。本当に尊敬しかないです。今回はそのお隣で一緒に現地で見られる。すごくぜいたくな時間なので、選手に注目しながら、その空間をすごく大事に頑張りたいと思います。