ノラ・ジョーンズ Photo:Masanori Doi
ノラ・ジョーンズ Photo:Masanori Doi

 ノラ・ジョーンズが24日、東京・日本武道館で来日公演を開催した。昨年リリースされた最新アルバム『ヴィジョンズ』を携えてのツアーであり、日本武道館でのライブは約3年ぶり。会場には彼女の音楽を愛するファンが集い、温かな空気に包まれた特別な一夜となった。

【ライブ写真】極上の演奏を聴かせたノラ・ジョーンズとバンド

 バンドメンバーは、ブライアン・ブレイド(ドラム)、ジョシュ・ラタンジー(ベース)、サミ・スティーヴンス(キーボード/ボーカル)、サーシャ・ダブソン(ギター/ボーカル)の4人。シンプルかつ洗練された編成で、全19曲が“歌”を中心に据えた美しい構成で届けられた。

 開演前、ステージには白いピアノが静かに佇(たたず)み、鳥のさえずりが響く。その中をグリーンのドレスをまとったノラが登場し、『フィールズ・ライク・ホーム』収録の「ホワット・アム・アイ・トゥ・ユー」で幕が開く。続けて『ヴィジョンズ』収録曲の「PARADISE」。メンバー全員によるコーラスが重なり、オーガニックで温かな音像が武道館という空間をやさしく包み込んだ。

 極上のムードで「RUNNING」と続き、観客から飛んだ歓声に、ノラが「アイシテル〜!」と可愛らしく応える場面もあり、その笑顔に客席はさらに沸いた。

 演奏面に注目すると、デビュー時からノラをサポートするブライアンのドラミングに耳が奪われた。ほかのメンバーのようにコーラスこそしないものの、音量や音色の繊細なコントロール、シンバルのひと振りにまで情感が宿り、まさに“歌うドラム”を聴かせてくれた。

 ジョシュはウッドベースとエレキベースを巧みに使い分け、あたたかな音色でサウンド全体を包み込む。サミは芯のある歌声と巧みなキーボードプレイ、時には鉄琴も演奏して楽曲に彩りを加え、サーシャはハスキーなボーカルと、控えめながらも効果的なギターワークで存在感を発揮。何よりもクールな立ち姿が印象的だった。

 中盤には、ノラがエレキギターを弾きながら歌唱するセクションが登場。「LITTLE BROKEN HEARTS」から「QUEEN OF THE SEA」まで、独特のタッチで奏でるギターと深みのある歌声が調和し、オーディエンスをさらに引き込んでいく。ギタリストとは違う間合いやフレージング、リードプレイなど、そのギター演奏にも耳を奪われた。

 新作のナンバーたちを、歌心あふれるアレンジでじっくりと聴かせる一方で、「COME AWAY WITH ME」「HAPPY PILLS」など代表曲では、会場から大きな拍手が沸き起こり、名曲への変わらぬ支持を感じさせた。これらの楽曲も、今回のメンバーによるコーラスやアンサンブルによって、歌心あふれる新たなアレンジで新鮮に届けられた。本編ラストの「ALL THIS TIME」は、再び鳥のさえずりに導かれて始まり、2曲目の「PARADISE」と美しい対をなすような静かな余韻を残して締めくくられた。

 アンコールでは、ベース&ドラムとの3ピース編成で「TURN ME ON」、フルメンバーで「LONG WAY HOME」を披露。そして最後に届けられたのは「DON’T KNOW WHY」。軽やかにハネたジャジィなアレンジと贅沢なコーラスが施され、イントロが流れ出すと同時に会場からはひときわ大きな歓声が上がった。

 派手な演出は一切なくとも、音の響きと声の温度感で観客を魅了したノラとバンドメンバーたち。日本武道館という特別な空間が、彼女たちのアンサンブルによって、まるで静かな森の中の音楽会のような雰囲気へと変貌したような、素敵な夜となった。

■セットリスト
M01. WHAT AM I TO YOU
M02. PARADISE
M03. RUNNING
M04. SUNRISE
M05. AFTER THE FALL
M06. I'M AWAKE
M07. I JUST WANNA DANCE
M08. LES FLEURS (MINNIE RIPERTON)
M09. VISIONS
M10. LITTLE BROKEN HEARTS
M11. STARING AT THE WALL
M12. ROSIE’S LULLABY
M13. QUEEN OF THE SEA
M14. COME AWAY WITH ME
M15. HAPPY PILLS
M16. ALL THIS TIME
アンコール
EN01. TURN ME ON
EN02. LONG WAY HOME
EN03. DON'T KNOW WHY