
「第1部 100社調査」紹介
東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」した。(新潟県柏崎市・刈羽村)が立地する柏崎刈羽地域の企業100社への聞き取り調査と、原発建設前から約40年間の統計データの分析を行い、原発立地に伴う経済波及効果を検証した。(文中敬称略、全5回)
<1>67社が停止の「影響ない」

柏崎刈羽原発の再稼働が地域経済を大きく押し上げる原動力となるかどうかについては、疑問符が付く結果となった。
<2>会社の規模や業績の変化は?

柏崎市が原発を誘致した最大の狙いは、地元活性化だった。しかし、経営規模や業績が「拡大した」と答えた企業は35社にとどまった。
<3>波及効果はあった?

原発立地による間接的な効果が「ある」と答えた企業は43社に上った。一方、「ない」という企業も半数近くあった。
<4>再稼働で売り上げは増える?

全体の半数に当たる50社が「再稼働効果」に一定の期待を寄せる一方、残りの50社は自社の売り上げにプラスにならないとの見方を示した。
<5>再稼働してほしい?

地元経済界がまとまって原発の早期再稼働を求めているように映るが、決して一枚岩ではなかった。
[原発は必要か]のラインナップ
第1部 100社調査

柏崎刈羽原発が地域経済に与えた影響を調べるため、地元企業100社を調査した。浮かび上がったのは、原発と地元企業の関係の薄さだった。
第2部 敷かれたレール

福島第1原発事故の影響が続く中、東京電力が柏崎刈羽原発を再び動かすレールが着々と敷かれる。誰が、なぜ原発を動かそうとしているのか-。
第3部 検証 経済神話

再稼働を巡る議論で「原発は地域経済に貢献する」との主張があるが、それは根拠の乏しい「神話」ではないか。統計を基に虚実を検証する。
第4部 再稼働 何のために

柏崎刈羽原発の再稼働は何のためなのか。再稼働問題を巡る東京電力の経営事情や、原発が抱える課題を探る。
第5部 依存せぬ道は

再生可能エネルギーの成長が加速する世界的潮流に逆行するかのように、日本で原子力を再評価する動きが目立つ。エネルギー事情の実相を追う。
【2015/12/13】
東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」した。(新潟県柏崎市・刈羽村)が立地する柏崎刈羽地域の経済界で、再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。を願う声が強まっている。地元経済団体は2015年6月、柏崎市と刈羽村の議会に早期再稼働を求める請願国や県、市町村に対し、その職務に関する要望や意見を述べることができる制度。同様の制度である「陳情」とは異なり、憲法で国民の権利として定められており、提出するには議員の紹介が必要となる。を提出した。東電福島第1原発事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。から5年がたとうとしているが、いまだに多くの住民が避難生活を送っている。柏崎刈羽原発の安全性を確認する国の審査も途上だ。それにもかかわらず、最もリスクを抱える地元から再稼働を願う声が上がるのはなぜか。1号機が運転を始めた1985年から30年。柏崎刈羽地域の企業100社に、地域経済と原発との関係を詳しく聞いた。(文中敬称略、全5回)
Q 地元に原発ができたことによって、間接的な売り上げ増はあった?
A 波及効果が「ある」43社 売上高への貢献度は低い
原発立地による間接的な効果が「ある」と答えた企業は43社に上り、原発立地による波及効果を感じている企業が一定程度あることが示された。一方、「ない」という企業も半数近くあり、波及効果が地域経済全体をどこまで押し上げたかは不透明だ。
原発全7基が完成する1997年までの建設期、柏崎刈羽地域は多くの建設作業員でにぎわった。建設期が終わった後も、...