「第3部 検証 経済神話」紹介

地元企業100社調査では、原発と地元企業との関係の薄さが浮かんだ。東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」した。の再稼働をめぐる議論で「原発は地域経済に貢献する」との主張がある。連載企画「原発は必要か」の第3部では、各種統計を基に「経済神話」の虚実を検証する。(文中敬称略、本編全8回)

<1>人口は増えたのか?

人口が10年間で倍近くに増える-。柏崎市が“人口倍増構想”を打ち出したのは、戦後初のマイナス成長となった1974年のことだった。

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<2>雇用は生まれたか?

原発が地域に多くの雇用をもたらすと信じている人は少なくない。実際はどうか-。

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<3>地域の産業に貢献したか?

東日本大震災の翌年である2012年、柏崎市の経済規模を示す「市内総生産」が急減した。前年の2割に当たる約781億円が失われた。

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<4>波及効果はあったか?

東京電力柏崎刈羽原発の停止による新潟県柏崎市の経済的損失は「約3400億円」とする試算がある。

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<5>再稼働効果はあるか?

「柏崎刈羽原発が再稼働すれば原発作業員が増え、街が活気づく」。こうした期待を語る声が新潟県柏崎市の経済界には根強くある。

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<6>巨額財政は役立ったか?

柏崎刈羽原発の1号機着工から38年。国や東電などから交付金、税金として新潟県柏崎市の財政にもたらされた恩恵は計2838億円に上る。

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<深掘り>柏崎刈羽地域の住民意識調査

柏崎刈羽原発の地元住民の原発への意識を探った北九州市立大の加藤尊秋准教授らの社会調査からは、福島第1原発事故の前後で住民意識がどう変化したかがはっきり見て取れた。

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<7>財政は潤ったのか?

原発を抱える自治体の財政は裕福だと思われてきた。「柏崎さんはいいねぇ」。新潟県柏崎市の前市長・西川正純(72)は在任時、よくこう声を掛けられたという。

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<8>事故が起きたらどうなるか?

東京電力福島第1原発事故の発生から2016年3月11日で5年となる。福島県の大熊町と双葉町は、今も町の大半が「帰還困難区域」だ。

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<データ分析・建設業>建設終了で生産額減少

柏崎市の建設業の総生産額は、原発1号機着工の1978年から大きく伸びて、新発田、三条両市の倍以上で推移した。

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<データ分析・製造業>全国の推移と同じ変動

製造業者による製品の出荷額を示す「製造品出荷額等」は、原発建設中の1991年まで順調に伸びた。だが、原発が全基完成した後は…。

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<データ分析・サービス業>県内の同規模市ともに増加

サービス業の総生産額は柏崎、三条、新発田の3市ともに、やや落ち込む時期を挟みつつも2012年までに全体的には増加した。

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<データ分析・卸売、小売業>建設期、新発田市と同水準

柏崎市の卸売・小売業の総生産額は1990年まで新発田市とほぼ同水準だった。原発の建設が10年以上も続いていたが、新発田を大きく上回ることはなかった。

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〔とじる〕

[原発は必要か]のラインナップ

第1部 100社調査

柏崎刈羽原発が地域経済に与えた影響を調べるため、地元企業100社を調査した。浮かび上がったのは、原発と地元企業の関係の薄さだった。

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第2部 敷かれたレール

福島第1原発事故の影響が続く中、東京電力が柏崎刈羽原発を再び動かすレールが着々と敷かれる。誰が、なぜ原発を動かそうとしているのか-。

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第3部 検証 経済神話

再稼働を巡る議論で「原発は地域経済に貢献する」との主張があるが、それは根拠の乏しい「神話」ではないか。統計を基に虚実を検証する。

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第4部 再稼働 何のために

柏崎刈羽原発の再稼働は何のためなのか。再稼働問題を巡る東京電力の経営事情や、原発が抱える課題を探る。

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第5部 依存せぬ道は

再生可能エネルギーの成長が加速する世界的潮流に逆行するかのように、日本で原子力を再評価する動きが目立つ。エネルギー事情の実相を追う。

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〔とじる〕

 東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」した。(新潟県柏崎市・刈羽村)は地元・柏崎市の主要産業にどのような影響をもたらしたのか-。新潟日報社は、柏崎市で就業者数の多い産業であるサービス、製造、卸売・小売、建設の4業種について、原発と経済の問題を研究する新潟大経済学部の藤堂史明准教授(43)と共同で分析を行った。1号機着工前の1975年からの各産業の統計データに、新潟日報社が2015年12月にまとめた地元企業100社への聞き取り調査の結果を重ねて検討した。浮かび上がったのは、建設業以外には、原発立地による経済効果は、全国や新潟県内で同規模の新発田、三条の両市と比べてもほとんど見られないという現実だった。

【2016/2/14】

 柏崎市の建設業の総生産額は、原発1号機着工の1978年から大きく伸びて、新発田、三条両市の倍以上で推移した。新たな号機の建設が始まるたび、その翌年には、総生産額が大きく跳ね上がる傾向が見られた。

 4号機着工の翌年の89年には、前年の倍近くに伸びた。この年は新発田、三条の4倍にまで及んだ。

 だが、原発の全基完成に向かう94年から減少傾向が始まり、7号機が完成した97年には新発田とほぼ同水準に。建設業の従業者数(国勢調査)を完成前の95年と、直近の2010年とで比較しても、柏崎は2000人も減らしている。

 東日本大震災後の2012年、3市の建設業総生産額は増えた。柏崎では原発の安全対策工事の一部も地元建設業者に発注されている。そのためか地元企業100社調査でも、全基停止の影響が「ある」と答えた建設業者は13社中2社だった。

◆藤堂史明氏解説 バブル崩壊の影響も要因

 原発の建設期、柏崎市の建設業の総生産額は他都市と比べても大きく上昇している。相対的に、原発の恩恵があったのだろう。...

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