
香山リカ
一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さんの再審公判で、ついに無罪判決が言いわたされた。多くの人が安堵(あんど)したと思うが、この「死刑判決から無罪へ」というできごとが含む問題は、あまりに深刻だ。
まず、無罪を勝ち取るまでの時間が長すぎる。1966年の逮捕から58年。68年の静岡地裁死刑判決から56年の歳月が経過した。2014年に地裁が再審開始を決定してからも、すでに10年が経過している。袴田さん自身は88歳になっており、長期間の拘束が原因とみられる精神の病に陥っている。本人にかわって出廷した姉のひで子さんもすでに91歳。ふたりの一生の大半が「無実を証明する闘い」に費やされた形だ。
そ...
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