上越新幹線を降りると、「重たい寒さ」を感じた。

 30日のJR新潟駅。新潟市中央区出身の会社員平林誠さん(25)=仮名=は、乾燥する東京とは異なる湿っぽい冷気に触れ、「新潟の冬だな」と思った。

 大学進学のため新潟を離れ、一昨年春、就職を機に東京都内で暮らし始めた。電話やインターネットでは感じられない「地元のよさ、実家のよさを体感するため」に、年末年始は毎年帰省している。

 列島を新型コロナウイルスの影が覆う。特に東京は連日、感染者数が増え続けていると、ニュースは伝える。いつもの年に比べ、東京駅の帰省客は明らかに少なかった。

 平林さんは帰省のために自腹でPCR検査をした。帰省前日、検査機関から送られてきたメールには「陰性」と記されていた。それでも万が一、「ウイルスを持ち込んでしまったら」。不安が付きまとう。

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 冬の“第3波”が訪れ、感染者の増加傾向に歯止めが掛からない。マスクの着用や少人数会食など、さまざまな「配慮」を求められることに対し、ストレスがたまり、「過剰反応」といった反発の声もある。

 実際、渋谷の街頭でマスクをしない生活をアピールする人たちを目にしたことがあったが、平林さんはそうは思わない。「マスクでかなり感染が防げるという情報がある。少人数での会食もリスクを減らすという点で筋が通る。必要なこと」。一方で年末年始ぐらいは、地元で羽を伸ばしたい気持ちもある。

 しかし、東京はウイルス禍の「激震地」として、感染者数は全国最多。帰って来た自分はもとより、迎え入れてくれる家族にも、厳しい視線が向けられないかが気掛かりだ。周囲に嫌な思いはさせたくない。人目を避け、外出は極力控えるつもりでいる。

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 ウイルスは見えない。感染対策を取っても、いつ、どんな形で感染するか分からない。その不安感から帰省をためらう人は少なくない。

 新潟日報社が2020年12月18~21日に行った「年末年始の帰省」に関するアンケート調査では、全体(280人)の52・5%(147人)が「例年帰省するが、今回はしない」と回答。「帰省する」は22・1%(62人)だった。

 年末の上越妙高駅(上越市)。ベビーカーを押し、北陸新幹線から降りる女性会社員(30)の姿があった。

 東京で暮らす。出産後、初めて上越に里帰りした。親に孫の顔を見せたかった。でも、どこか後ろめたさがある。大変な時に「東京から帰って来て、申し訳ない」と。

 ただ、親孝行がしたいだけ-。誰もが抱く、その思いは、ウイルス禍の向かい風に揺さぶられていた。