【2021/01/04】
年末年始、新型コロナウイルス感染拡大の勢いは衰えなかった。2日には、首都圏の4知事が「緊急事態宣言」の発令を政府に要請した。3日、県内の新幹線発着駅では、郷里で新年を迎えた人たちが、その首都圏などへ帰って行った。
東京行きの上越新幹線は同日、ほとんどの便で満席に至らず、例年のような混雑はない。JR新潟駅の改札口では、新潟市秋葉区の男性(65)が次女(28)を見送っていた。
新型ウイルスは心配だったが、年末年始を家族で過ごした。まな娘は今年、現在暮らす神奈川県へ嫁ぐ。それでも「できるだけ新潟に帰って来てほしい」。言葉少なに「元気でな」と声を掛け、ホームへ向かう後ろ姿を目で追い続けた。
長岡市の40代の夫妻は、埼玉県の大学に通う長女(19)をJR長岡駅に送り届けた。娘は実家を離れて初の年末年始。くつろいでいたようだった。夫妻は「顔を見ることができてほっとした」。
ただ「緊急事態宣言要請」のニュースを見て、「春休みも帰って来られるかな」と漏らした娘に、「大丈夫だよ」とは言い切れなかった。
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帰省できずに、「新しい生活様式」で新年を迎えた人もいる。
東京都練馬区の大学生旅河夏希さん(22)は、年末に三条市の実家に帰る予定だった。だが、家族の職場では、職員が自宅に帰省者を迎えることを認めなかったため、やむなく新幹線の予約をキャンセルした。その代わりに、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って“オンライン帰省”した。
大みそか、パソコンの画面には三条に暮らす両親と兄、祖母らの姿があった。おせち料理が並ぶ、にぎやかな様子が見えた。
年末年始を家族と過ごさなかったのは初めて。アパートで一人、画面に向かい、家族と話しながら宅配のすしをつまんだ。さみしく、味気なかった。
年末年始は毎年、祖母の家で餅つきの手伝いをしたり、家族で福袋を買いに出掛けたりしていた。今年は東京。外出しようとも思ったが、密集を避けるため、初売りも福袋もインターネット通販で済ませた。
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ウイルス禍で人々の暮らしは変わった。その一つがインターネット活用の流れだ。ズームなどを用いた在宅勤務のほか、オンライン飲み会といった新しいスタイルが普及した。
旅河さんは春から都内で社会人生活を始める。学生時よりも時間の余裕はなくなる。年末年始にゆっくりと帰省できなくなるかもしれない。1年後の新型ウイルスの状況も読めない。
物理的な距離と心理的な距離は比例する。「対面」のぬくもりは大切にしたい。だが、現実的に「しばらくはオンラインという形を受け入れることが必要なのかも」。そう思えてくる。
=おわり=