【2021/01/01】
目に見えない不安に翻弄(ほんろう)されながら、新たな年、2021年を迎えた。新型コロナウイルスは私たちの背後に潜み続ける。日常のさまざまな場面で、人と人とのつながりに「不自由」が生まれている。感染を防ぐついたては透明でも、心の距離を隔てる。だが、今はこの現実を受け止めるしかない。誰もが同じ渦中にあるからこそ、共有できる思いがあるはず。ありふれた日常の「今」を探る長期企画「明日の風は」では、そんな人たちの思いに目線を合わせる。明日の風は、どこに吹くのだろうか。私たちが日々暮らし、これからも時を重ねていくこの新潟を舞台に、その行方を見つめる。始まりは帰省客らが行き交う年末年始の駅から-。(長期企画「明日の風は」取材班)
数年に一度の寒波に見舞われた2020年の大みそか。JR新潟駅の人けは少ない。理由は天候だけではない。
新幹線が到着するたびに、人の波がホームを埋める。その顔の一つ一つには、古里や家族への思いがにじむ-。年末、県内の新幹線停車駅に広がる「当たり前の光景」だった。
新型コロナウイルスの感染拡大は、その帰省の風景を変えた。菅義偉首相は感染防止へ「静かな年末年始」を呼び掛けた。東京では12月31日、確認された感染者数が初めて1日当たり一千人を超えた。
同日午前、ホームに滑り込んだ新幹線のドアが開く。マスクを着け、ホームに降り立った人たちの表情に満面の笑みはない。感染への不安なのか、帰省したことを誰かに知られることへの抵抗感なのか。
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都内の大学に通う一人娘(22)を迎えに来た新潟市中央区の会社員男性(54)は「今は世の中が疑心暗鬼ですよね」と話した。
ただ、ウイルス禍の中でも、家族や地元の友人と再会する喜びは変わらない。
改札口の向こうで、出迎えた人たちが手を振る。ホームから階段を下りると、遠くに見える家族の姿に笑みがこぼれる。向き合って交わす一言一言が、お互いの表情を和らげる。
「よく来たね」。新潟市西区に住む60代の主婦は夫と共に、神奈川県に暮らす40代の息子夫婦と小さな孫を笑顔で迎えた。1年ぶりの再会だ。
息子一家を迎え入れるため、年明けから2週間ほどはできるだけ外出を控えようと夫と話し合った。「帰る方も迎える方も気を遣わないといけない世の中。早く、しがらみなく行き来ができるようになるといいのですが」。ぽつりとつぶやいた。