【2021/04/25】

 新型ウイルス対策で、社会は人と人との密な接触を避ける「非対面」を意識せざるを得なくなった。学生・教職員計約1500人が在籍する新潟県立大学も例外ではなく、昨年は春から半年間、学生の構内立ち入りを原則禁止とした。これを契機に一気に進んだのがオンラインの活用。学生らは戸惑いつつも、メリットを見いだす。また、対面の温かさに気付かされもした。「ウィズコロナ」に向けた、キャンパスの風景を見つめる。

 新生活の始まりには、これ以上ない日和だった。空は青く澄み、キャンパスは桜色に染まっていた。

 4月初め、新潟県立大(新潟市東区)の入学式。昨年は新型コロナウイルスの影響で見送られた。正門前は2年ぶりに、真新しいスーツ姿の若者たちであふれた。

 「充実した学生生活を送る」。新潟市西区出身の新1年、福田聖翔(まさと)さん(18)は、感染下にあったこの1年間を思い、胸が熱くなるのを感じた。

 高校最後の年。ハンドボールに打ち込んでいたが、目標の全国高校総合体育大会(インターハイ)が中止となり、気持ちの整理もつかないまま引退した。休校もあり、仲間たちと過ごす時間さえも削られた。

 だから、大学生となった今、「ボランティアやバイトなど、人との関わりを増やしたい」と思った。

 だが、授業が始まったばかりの4月半ば、福田さんに大学からメールが送られてきた。学内で初めて感染者が確認されたという知らせだった。新たな友人や先生らと出会ったばかりで、2日間の臨時休講。その後も感染確認と臨時休講が繰り返された。「いきなりで驚いたけれど、仕方がない。こういったことを受け入れながら、今は過ごしていかなければならないと思う」と冷静に受け止めた。

 ウイルスは収束どころか、影響が広がり続ける。学内のみならず、学外でも。「現状を嘆いても始まらない。感染に気を付けながら、どう人と接していくかを考えていこう」。福田さんは柔軟に、感染下のキャンパスライフを探ろうとしている。

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 「家なのに休めない感じがして、つらかった」。新潟県立大4年の宮島理恵さん(21)は、燕市の自宅で受けたオンライン授業の期間を振り返り、そう言う。

 新型コロナウイルスの感染対策の一環で、県立大生は昨年の前期(4~9月)、キャンパスに入ることができなかった。「いつ始業するんだろう」。見えないウイルスの影響で、明日の予定さえ立たず、もどかしかった。

 授業の形態が変わり、5月中旬から原則オンラインで行われるようになった。新鮮さの一方で「リポートなどの課題が多くて、毎日それに追われていたなって。先生たちも試行錯誤で大変だったと思う」。

 その言葉は的を射ていた。オンライン授業を受け持った国際地域学部の小谷一明教授(55)は「対面で授業をしていないことに『罪の意識』があった。せめて課題はいっぱい見ようと。初めてなので、すごく気負っていた」。感染下で誰もが戸惑っていた。

 授業以外でも非対面による「弊害」があった。

 オンラインでの授業が終われば、インターネットでつながっていた先生や友人との接続が切れる。すると、静まり返った自宅の部屋に、ひとり取り残される。

 「授業の合間とかに、友人と天気や趣味の話ができない」。LINE(ライン)で伝えるほどでもない他愛(たあい)もない話。その時間を失い、宮島さんは「さみしくて、ストレスだった」。自宅にこもる生活が長引くにつれ、孤独感が高まり、家族にもきつい態度で接するようになってしまっていた。

 不慣れな環境が心身に負担を掛けた。だが、10月の後期から対面授業が再開すると、世界が一変した。

 「気持ちいい」。最寄り駅から大学へと続く道を歩きながら宮島さんは思った。再会した友人との雑談が楽しかった。「こういう時間があるといいんだな」。長く非対面での交流を経験して気付いた。

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 現在、就職活動中の4年、細川友衣さん(22)も昨年、友人と交流する機会が減り、不安を覚えた。「インターンシップ(就業体験)をみんな、どれくらいやっているのだろうとか、そういう情報交換が全くできなかった」

 だが、実際に就活に臨むと、オンラインの推進はプラス面が大きかった。

 例えば面接。「オンラインだと自宅で受けられるから、面接会場の雰囲気にのまれない。緊張するタイプの自分には向いているのかな」と感じた。会社説明会などに飛び回る時間も交通費も、オンラインなら抑えることができた。

 ただ対面でもオンラインでも、向き合うのは人だ。それは変わらない。「はきはきと話し、自分のよさをしっかりと伝える」。その姿勢を貫くつもりだ。

◆対面授業増へ模索続く

 文部科学省は3月、新年度に向けて感染対策を講じた上で対面授業の実施を促す通知を大学などに出した。各大学は対面授業の機会を少しでも増やそうと手探りを続けている。

 文科省が昨年8~9月、全国の大学(1060校、高等専門学校含む)を対象に行った調査によると、後期授業の形態を「対面と遠隔(オンライン)の併用」と回答したのは全体の8割だった。残りの2割弱は「全面対面」を採用する方針としていた。

 対面と遠隔を併用するとした大学に対し、割合はどれぐらいになるかを聞き取ったところ、6割弱の学校が授業の半分以上を対面で実施予定だと答えた。

 また、どんな場面で対面・遠隔を使い分けるか(複数回答)については「実験、実技などは対面」とする学校が約9割、「対面授業の中継など、一つの授業で対面・遠隔を同時に実施」とした学校が約5割だった。