【2021/04/27】
新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの若者が集う大学に変化を求めた。
前身の県立新潟女子短期大学(1963年創立)から数え、半世紀以上の歴史を持つ新潟県立大学も、対面授業の代替策として、全面的なオンライン授業の体制整備に追われた。
昨年4月以降、大学のLAN回線の拡充に始まり、学生にはパソコン購入や、自宅などで受講できるだけの通信量確保をお願いした。5月11日から、前期授業は原則オンラインに切り替わった。
県立大新型ウイルス対策本部副本部長の黒田俊郎副学長(63)は「対面を前提としてきた語学の授業で苦労があった。パワーポイントの作成など準備に追われ、消耗感が強い教員もいた」と振り返る。
■ ■
試行錯誤があった一方で、「オンラインという新しい『道具』が手に入った」とも言う。
活用事例の一つが国際交流。感染下では留学や海外研修もストップし、「何もできないと思考停止に陥っていた」と国際交流センター長の石井玲子教授(51)=人間生活学部子ども学科=は明かす。
国際交流とオンラインの「相性」を心配したが、「若い学生ならすぐに順応するだろう」とも思っていた。文部科学省などが推進するオンラインによる国際協働学習(「COIL」型教育)を実践し、保育を学ぶ米ハワイの学生と10月下旬から計4回、英語で交流した。
■ ■
各地における子どもの「自由遊び」の映像を見せた時だった。先生が見守るだけのハワイの様子に、県立大生は「なぜ子どもをほったらかしにするんだ」などと反応。一方、ハワイの学生からは「日本は自由遊びなのに先生が手を出している。これでは自立できない」といった意見が挙がった。
自分に向けられた質問には、必ずウェブ掲示板に書き込んで答えるというルールにしたことで、学生同士の討論も盛んになった。英会話が苦手でも翻訳アプリを使って参加できた。結果、異文化に触れ、相手を学び、自分を知るという留学と同様の「効果」を得た。
「留学による成果が100でオンラインが50というより、新しい100ができた」と石井教授は手応えを感じた。「情熱があれば通じ合えるし、学べる」
対面授業を再開していた県立大だったが、今月半ばから学内で感染者が確認され始め、臨時休講や学生の入構自粛といった対応を余儀なくされた。県内の感染状況は深刻さを増している。感染下で「学び」の形がまだ揺れている中で、黒田副学長は気を引き締める。「地域に根差し、世界に広げていくという県立大の理念は変わらない。オンラインと対面を使い分けながら、前に進んでいく」
=おわり=
(この連載は長期企画取材班・中島陽平、写真は大須賀悠、上林陸来が担当しました)
◎取材を終えて 順応する姿頼もしく
昨春から仕事や私用でオンラインを利用する機会が増えた。何をするにも対面を前提としてきたアラフォーの自分は不慣れな状況に苦戦した。
今回、新潟県立大の学生と話してみて、柔軟にオンラインを受け入れる姿勢が新鮮だった。就職活動中の学生は先日、友人たちとオンラインで面接練習をしたという。理由は「会って集まるより、時間を有効に使えるから」。素早く頭を切り替え、感染下の「新しい生活様式」に順応する若さを頼もしく思った。
もちろん学生は対面に否定的なわけではない。むしろ「非対面」の期間を経験したことで、人と触れ合う尊さをかみしめていた。
感染収束の兆しは見えない。目まぐるしい環境変化に誰もが戸惑う今、若い世代の「軽やかさ」に注目していきたい。
(中島)