無事ひなが誕生 国内初、人工ふ化 日中協力 新たな一歩

 絶滅の危機にひんしている国際保護鳥トキ(学名・ニッポニア・ニッポン)の増殖に取り組む佐渡トキ保護センター(佐渡新穂村)で1999年5月21日午後3時半、ヤンヤン(洋洋・雌)とヨウヨウ(友友・雄)の中国ペアから産まれた卵がふ化、日本の人工増殖史上初めてトキのひなが誕生した。性別は不明。国内産のトキは同センターに高齢のキン(雌)1羽が残るだけで、国内種の絶滅は避けられない。中国から贈られたペアの増殖成功で、日中のトキ保護協力は新たな一歩を踏み出した。【1999/05/22】

 県などによると、ひなはふ卵器の中で自力で卵を割り、割れた殻を押し出すようにして誕生した。20日朝のひながくちばしで殻を破る「はし(嘴)打ち」開始から31時間後だった。ひなは体重55グラム。「ヒュー、ヒュー」と鳴いている。ふ化約3時間後、育すう器に移され、元気という。

 まだ自力でえさを取れないため、22日からドジョウとミルクをミキサーにかけ、ビタミン剤などを混ぜた人工飼料が与えられる。

 同センターで、近辻宏帰参事ら飼育スタッフ3人がそろって会見、「順調なふ化だった」「でもこんな長い2日間はなかった」と大仕事を終えた喜びを語った。

 ヤンヤン、ヨウヨウは共に3歳で今年1月、中国から贈られた。ヤンヤンは4月22日から計4個産卵、1つは破卵した。ふ化した卵は4月24日に産卵されたものとみられる。

 今月20日に巣から採卵した2個のうち、1つが有精卵と確認された。ふ卵器で6月初めの2番目のふ化を待っている。引き続きペアが産卵第2期に入る可能性もある。

 日本のトキ保護は1981(昭和56)年、佐渡で5羽に減った野生トキを一斉捕獲、人工増殖に全面移行していた。日中協力のペアリングは85年に始まり、今回が5組目。日本のトキ増殖はすべて失敗してきた。佐渡にトキ保護センター(旧施設)が開設された67年以来、33年目の悲願達成になった。