最後の日本トキ「キン」が死ぬ

 佐渡新穂村の佐渡トキ保護センターで飼育されていた日本トキの最後の1羽「キン」(雌)が2003年10月10日午前7時20分ごろ、死んでいるのが見つかった。学名ニッポニア・ニッポン。推定36歳、生存期間は世界最長、人間なら100歳以上に匹敵する。死因は老衰とみられる。日本を象徴する国際保護鳥だった国産種のトキはこれで絶滅した。【2003/10/10】

近辻宏帰さん(前佐渡トキ保護センター長)は、1968年の捕獲以来、キンを見守り続けてきた=2001年2月23日

 県や環境省によると、同日午前6時にセンター職員が見回った時は、生きていたが、同7時20分ごろに行った際は、既に死亡していた。最近のキンは長い時間立つことができず、腹ばいになることが多かったが、食欲は変わらず、人工飼料や馬肉などを1日200グラム食べていた。

 キンの死体は冷蔵保存されており、同日中に同センターで環境省の委嘱を受けた専門チームが解剖。臓器組織と遺伝子の半永久的な保存措置が取られる。

 キンは幼鳥だった1968(昭和43)年3月、佐渡真野町の水田で、地元の故宇治金太郎さんの手で捕獲された。以来、保護センターのケージで人工飼育は世界最長の35年7カ月に及んだ。

 その間石川県から移送された本州最後のトキ・ノリや佐渡で捕獲されたミドリ、85年に借りた中国トキとの間で再三にわたり、ペアリングが試みられたが、1度も卵を産むことはなかった。名前は宇治さんにちなんで「キン」と付けられた。

 日本トキは81年に野生最後の5羽が佐渡で一斉捕獲。キンと計6羽による人工飼育による増殖が試みられたが、その過程で次々と死亡、95年4月のミドリの死でキンが唯一の個体となっていた。キンは最近、老化が目立ち、99年10月や今年2月にも食欲が低下することもあった。

 国内のトキの人工繁殖は中国から贈られたペアで99年に初めて成功。その子供たちや中国から来たトキとの間に生まれた子供など、同センターでは現在39羽が飼育されている。

 今後もトキの個体数増加が見込まれることから、環境省などでは野生復帰プランを進めている。